思いに応える選手

「ATOMSは大きなメーカーではありませんが、だからこその強みもあると思っています。他のメーカーだと球団ごとに担当者が選手と職人の間に入ったりします。 でも職人として選手と直接やり取りできるのは本当に大きいです。選手も感覚を言語化するのは簡単ではないですから、彼らの言葉を直接、聞けるに越したことはないし、言いたいことを察知できてこそ職人だと思っています」(同前) 牧のバットを中大1年生から削り続けている「シュアプレイ」(三共スポーツのオリジナルブランド)のバット職人の森崎寛樹氏の頭にも、思い描く来季の牧の姿があるという。 「基本的にバットをインサイドアウトで振れる選手はいいバッターです。牧君はその究極と言ってもいいくらい、インサイドからバットを出せる。ヘッドが返らないから反対方向にも強い打球が打てる。 昨季、打点王を狙って獲りましたが、彼には首位打者を狙って獲ってほしいし、それができると思っています。だから僕は首位打者を獲ってもらうためにどうしたらいいか常に考えている。 上武のこともよく知っていますけど、『俺は牧を首位打者にするためにいつも考えているで。おまえはゴールデングラブを獲らせろ』とあおっています。バットが僕で、グラブは上武、全体の統括を三共スポーツさんがやっている。牧君を応援したい集まりなわけです。こっちの本気度が伝われば絶対に応えてくれる。牧秀悟は、そういう選手だと思っています」 牧は一人でここまで登ってきたわけではない。だからこそ、これからも頂への道を走り続けられるのだ。 ……・・ 【最初から読む】「大手よりも恩義」DeNA・牧秀悟と職人たちの絆の物語...《日本シリーズ制覇後の深夜2時半》に取った「牧らしい行動」