『機動戦士ガンダム』MSだけじゃなく「ヘルメット」も画期的だった? 富野監督も配慮し続けたデザインの秀逸さ
富野監督も推奨した「ヘルメット」の画期的な制作手法
そこに登場したのが『機動戦士ガンダム』の顔全面を覆う宇宙服型のヘルメットです。この形であれば、ひとつの絵で2種類の肌塗り分けは不要。続く『伝説巨神イデオン』のヘルメットも同様です。 さらに『聖戦士ダンバイン』ではヘルメットにフードがありません。そのうえ、口元が隠れるデザインなので、業界で「口パク」と呼ばれる、しゃべるときの口の動きの動画さえ不要なのです。 アニメに詳しい方ならもうお分かりですね? できるだけ制作現場の手間を省き、作画の枚数も減らす。富野由悠季監督お得意の、時間と費用の節約、今でいえばSDGsな制作手法です。 もちろん、この後に続く作品が全部同様ではありません。まず重視されるのは「見た目の魅力」ですし、作品内容との整合性ですからね。 付け加えるなら、高橋良輔監督の『装甲騎兵ボトムズ』で主人公をはじめとする人型ロボット兵器「アーマードトルーパー」に乗る兵士たちのヘルメットに至っては、顔全体が覆われ、いわゆるバイザーもありません。つまり、口パクどころか目の部分を覆うスコープをあげない限り顔が全く見えないのです(作品内すべてというわけではなく、別タイプのヘルメットも登場しています)。 しかしそれを逆手に取り、スコープだけを上げ、その鋭い目線を視聴者に向ける主人公のシーンやイラストなどにハートを持って行かれたファンが実はたくさんいるのです。 ヘルメット、されどヘルメット。 そんな部分に注目して古い作品を見てみると、また新たな楽しみ方ができるかもしれません。 【著者プロフィール】 風間洋(河原よしえ) 1975年よりアニメ制作会社サンライズ(現・バンダイナムコフィルムワークス)の『勇者ライディーン』(東北新社)制作スタジオに学生バイトで所属。卒業後、正規スタッフとして『無敵超人ザンボット3』等の設定助手、『最強ロボ ダイオージャ』『戦闘メカ ザブングル』『聖戦士ダンバイン』『巨神ゴーグ』等の文芸設定制作、『重戦機エルガイム』では「河原よしえ」名で脚本参加。『機甲戦記ドラグナー』『魔神英雄伝ワタル』『鎧伝 サムライトルーパー』等々の企画開発等に携わる。1989年より著述家として独立。同社作品のノベライズ、オリジナル小説、脚本、ムック関係やコラム等も手掛けている。 2017年から、認定NPO法人・アニメ、特撮アーカイブ機構『ATAC』研究員として、アニメーションのアーカイブ活動にも参加中。
風間洋(河原よしえ)