夏の甲子園・慶應フィーバーの過熱報道に「怖さあった」 丸田湊斗が明かす夢の舞台の裏側
【メディアに踊らされないことが大事】 丸田個人では「慶應のプリンス」とも呼ばれ、一躍時の人となった。下世話だが、相当モテたのではないだろうか。 「いやいや(笑)。(SNSの)DMはたくさん来ましたけど、怖いから全然読んでないです。ありがたいことではあるなとは思ってました」 丸田は「ただ......」と続ける。 「野球以外の個人的なことをいろいろ取り上げられるようになって過熱しすぎだなと。一気にブワーっときたのでメディアに取り上げられることの怖さはありました。『文春』が家に来ちゃったり、大変な時期もありました」 過熱する報道に加え、悪意を持って近づいてくる人たちもいた。 「少し人間不信に陥ることもありました。でも、そういう経験をしたことで成長できたような気がします。メディアは怖いって思っているくらいじゃないとダメ。それと踊らされないことが大事ですね」
【後輩たちへの"らしい"メッセージ】 あれから1年が経った。今、あらためて丸田にとってエンジョイ・ベースボールとは? 「『エンジョイ』ってラクして勝つとか、練習がゆるいという意味じゃなくて、全力を注いで、野球や試合を楽しみ尽くす準備をするってことなんですよね。本番で楽しむ余裕が生まれるくらい練習を重ねて試合に臨む。そういう気持ちなんだと思います」 森林監督は、エンジョイ・ベースボールは"成長する楽しさ"とも言った。丸田は「そのとおりだと思います」と言う。 「僕自身、中学時代は注目される選手じゃなかった。というか、注目されたのは高校3年の夏だけ。それでも高校の3年間ですごく伸びた実感がありますし、それが楽しさにつながったのかと」 しかし、勝負の世界は紙一重。エンジョイ・ベースボールを継承した今夏の慶應は神奈川県予選5回戦で桐蔭学園に2-4で競り負けた。この試合の応援に駆けつけていた丸田は、後輩たちをこう労う。 「僕らの優勝も後輩たちがいなかったら達成できなかった。試合後は(主将の加藤)右悟も号泣していたし、なかなかかける言葉が見つからなかったのですが、これからしっかり休んでほしい。 僕らはその年の高校生のなかで一番長く野球をやらせてもらった反面、大学入学までのフリータイムはあまりなかった。彼らはそこをしっかり休んでいろいろ経験してもらって、大学でまた一緒に野球がやれればいいですね」 常々「野球だけの人間になるのはイヤ」と口にする丸田らしい言葉だった。 中編<慶應高優勝メンバー・丸田湊斗が高校球児へ日焼け対策のススメ「長丁場の甲子園を戦い抜くために」>を読む 後編<昨夏甲子園優勝の慶應・丸田湊斗が語る、プロ入りと目指す人物像「いい教育者になりたい」の真意とは?>を読む 【プロフィール】丸田湊斗 まるた・みなと 2005年、横浜市生まれ。小学3年から野球を始め、日限山中時代は横浜泉中央ボーイズでプレー。慶應高では2年春からベンチ入りし、2023年には春夏ともに甲子園に出場。全国制覇を果たした夏は1番・センターとして5試合で打率4割超、決勝で先頭打者本塁打を放った。2024年、慶應大法学部に進学。東京六大学春季リーグで5試合にスタメン出場した。
武松佑季●取材・文 text by Takematsu Yuki