Official髭男dism「Same Blue」、Mrs. GREEN APPLE「ライラック」……“変拍子”が表現する青春の不安定さ
Mrs. GREEN APPLE「ライラック」(『忘却バッテリー』OPテーマ)にみられる変拍子
歌詞の世界観と変拍子を巧みに活用した楽曲として、Mrs. GREEN APPLE「ライラック」を挙げることもできる。TVアニメ『忘却バッテリー』(テレビ東京系)のオープニング・テーマにも起用されている本作は、コードやサウンドの音色的に全編で明るい雰囲気が漂っている。しかし、Cメロではぐっと暗い内面にフォーカスする歌詞構成になり、〈影が痛い〉というフレーズ以降、拍子が変わる展開になる。それは、歌詞軸で見ても、リズム軸で見ても、意図的に変拍子にし、変化を与えた印象が強い。歌詞で“感情の不安定感”を示しつつ、変拍子そのものが持つ不安定感をシンクロさせることで、楽曲全体の構成として「前後の変化」を浮き彫りにしていることがわかる。 なお「ライラック」の変拍子の使い方を具体的にみていくと、〈影が痛い〉のフレーズから3拍子に変化しており、さらに3拍子が3小節続くと、4拍子に戻り、その後しばらく3拍子と4拍子が混じる構成になっている。それまで“ベタ”なリズムだった分、ここのテクニカルなアプローチが印象深い。さらにサビに入ると、拍子がもとのパターンに戻るのだが、そのタイミングで転調しているのだ。歌詞の変化に合わせた展開を楽曲構造にも落とし込む。この一本軸が綺麗に繋がる美しさが際立っており、大森元貴(Vo/Gt)のソングライティングの素晴らしさを体感できる。 今回は変拍子という切り口で、「Same Blue」と「ライラック」という2曲にスポットを当てて紹介した。変拍子は、音楽的な面白さを追求したうえでの単純な選択なのではなく、言葉に対するアプローチと音楽的なアプローチを一貫させるなかで、追求されたアプローチであるとも言えるのではないか? それを示すひとつのエビデンスとして、今回はこの2曲を紹介した。タイアップソングといっても、さまざまな切り口で音楽を楽しむことができるのが、現代のポップミュージックの面白いところなのかもしれない。
ロッキン・ライフの中の人