大阪・関西万博を狙い 日本vs世界 “次世代船”バトル【WBS】
2025年4月に開幕する大阪・関西万博では「空飛ぶクルマ」が目玉といわれていますが、実は「船」の分野でも、この万博をめぐり次世代の開発競争が繰り広げられています。現場を取材しました。 広島県尾道市。言わずと知れた造船の街です。地元の造船会社が建造しているのが全長30メートル、最大150人が乗れるという次世代船です。一体何が新しいのでしょうか? 「大阪・関西万博で客を乗せて日本で初めて運航する水素の船」(「岩谷産業」水素本部の井上恭豪さん) 実はこの船、水素から電気を作り、その電気でモーターを動かして進む水素燃料電池船です。CO2の排出をゼロにできるため、次世代の船と期待されているのです。 来年4月からの万博の会期中は、大阪・中之島からユニバーサル・スタジオ・ジャパンの近くの港を経由して、会場まで40分でつなぐ計画です。 プロジェクトを主導しているのが日本の水素燃料事業のトップランナーである岩谷産業です。担当の井上さんによれば水素船には乗り心地に大きなメリットがあるといいます 「エンジンがないので、非常に静かで振動も少ない。臭いもしないというのが特徴」(井上さん) 振動が少なく、燃料の臭いもしない特性を生かし、船内の利用の幅も広がります。例えば船の1階部分に設ける客室では「ビジネスプレゼンテーションをするシーンも想定している。カクテルパーティーも可能」(井上さん)といいます。 ただ、水素船には課題もあります。モーターは馬力が小さいため、時速20キロほどとスピードが従来の船の半分しか出せないのです。この船の造船を手がける「瀬戸クラフト」の川口新太郎取締役も「海は波もあるし、風もある。モーターが小さいのでどこまで走ってくれるのか」と話します。 馬力を最大限生かすため、船体を全てアルミにして軽量化。今年半ばの完成を目指し、建造を急いでいます。 その岩谷産業は、万博会場の対岸に先月、船専用の水素ステーションを設置しました。肝入りの水素事業を世界にアピールします。 「万博は世界中の人が集まる非常にいい機会。そこで水素の魅力を発信していければ」(井上さん) 大阪湾での試運転は年内に始まります。そんな日本の水素船に強力なライバルが。