ツアープロが使って話題に! 『魔法のクランク』を開発した長井薫とは何者? 独特理論が面白すぎた
ツアーでかなりの実績を持つプロゴルファーが今年から使い始めて話題となっているクランク状の練習器具がある。その名も『魔法のクランク』。開発者は新宿のインドアスタジオでレッスンを行う“キャロ先生”こと長井薫氏だ。 どうやって使う? 『魔法のクランク』はトップで“ひっくり返す”【写真】 ■20代で脱サラしティーチングの道へ 初心者からツアープロまで教えている長井氏だが、ティーチングの資格は持っていない。独学でゴルフスイングを研究し、これまでに数々のユニークな練習器具を開発してきた。ホースにグリップが付いた『魔法のホース』は、クラブアナリストのマーク金井氏に紹介されたのをきっかけに火がつき、岩井姉妹や小祝さくら、笹生優花なども使うヒット商品になっている。 長井氏は1960年に兵庫県で生まれた。学生時代からゴルフを始めたが「僕は競い合うのが好きじゃなかった。みんながハッピーになれればいい」と競技経験はほとんどないという。「学生時代はお金がなくてそんなにラウンドできなかった。それでも70台では回れました。環境があれば上手くなれるとは思っていました」。大学卒業後はゴルフとは関係ない会社に就職し上京。半導体の営業マンとして社会に飛び出した。 その後、20代で脱サラし、趣味だったゴルフは職業に。ティーチングプロとして雇われ新宿御苑でレッスン業を開始した。新宿5丁目に自身のゴルフスタジオ『新宿インドアGOLF』を立ち上げたのはおよそ30年前、1995年になる。 「スイングの研究はレッスンをしながらです。最初は『スエーしているよ』とか『ワキが空いているよ』とかダメ出しばかりしていたんです。その方が上手くなるかなって。生徒さんは『だからスライスするんだ』とその場では納得してくれるんですけど、結局直らない。何でかなと考えると“流れ”があるから。バックスイングが歪んでいるために、手を使わないと当たらないんです」 どうしたらゴルフが上手くなるのか?を追究していくうちに、『魔法のホース』や『魔法のクランク』など、オリジナルの練習器具を次々と生み出していった。ちなみに、『魔法のクランク』は長井氏のInstagramからメリカリのサイトに飛ぶと購入することができ、税込みで17,800円となっている。 ■長井氏が提唱する“インフィニティ理論”とは? 何勝も挙げているツアープロも納得する長井氏のスイング理論。その根本になっているのは動物の動きだ。「鳥が飛んだり、猿が飛びついたり、猫が塀を登ったりする動きがヒントになっています。動物の動きは“うねって”いる。ワキを締めたまま羽ばたいている鳥は一羽もいません。動きはゴルフスイングも一緒だなと思いました」。 だから、長井氏が理想とするスイングは「切り・返さない」。うねりながら動き続ける。トップで止めるという発想はないのだ。「通常、ゴルフは車をバックして、次に前進しているわけです。それをバックしないで前進して戻ってきているようなイメージ。切り返しには『切る』という文字が入っていますよね。私の理論では切り返しがないんです。面白いでしょ?」。 ゴルフスイングでは基本的にボールにフェースを真っすぐ向けて構える。バックスイングではフェースをボールに向けたまま上げていく。それを長井氏は「車のバック」と例えている。トップではバックからドライブにギアを入れ替え、ボールに向かって前進していくわけだ。 それに対して、「前進して戻って来る」とはバックスイングのときからドライブにギアを入れて、「8」の字を描く動きとなる。ギアを入れ替える「切る」はない。「それが僕の“インフィニティ理論”です。右カーブと左カーブがあって、テークバックが左回り(時計回り)で、フォローで右に回る」。インフィニティは無限大を意味し、「8」を横にした記号「∞」で表す。「インフィニティをだんだん狭くしていくと、スイングの軌道になります。背泳ぎやボートでオールを漕ぐ動きにも似ていますね」。 ■『魔法のクランク』使用プロが語る“裏打ち”の真相 『魔法のクランク』を使うプロがこれを“裏打ち”と呼んでいるのは、切り返しで進行方向が変わらずバックフェースで打っているようなイメージだからだ。長井氏の考えは逆で「裏に向けておいてターンして表に戻ってくる」と表現する。それはテニスや卓球からヒントを得た。「テークバックではラケットの面が下を向いているはずなんですよ。それをゴルフにも使いましょうという考え方です」。 プロテニスプレーヤーの錦織圭のテークバックを例に挙げると、ラケットで打とうとする面はむしろ後ろを向いているが、それをひっくり返してボールを打っていく。『魔法のクランク』を使うと、一般的なゴルフスイングにはない、このひっくり返す動きを誰でも体感することができる。 また、現代の大型ヘッドドライバーは重心距離が長いため、一度開くとフェースを真っすぐ戻すのは至難の業。インフィニティ理論は閉じながら上げて、開いて当てるイメージだから、そんな大型ヘッドドライバーも扱いやすい。長井氏は「右に切ったハンドルを左に調整するよりも、左に切っておいて少しずつ緩めた方がコントロールしやすい」と語る。つまり、閉じておいて開く方が真っすぐ飛ばすのは簡単だということ。しかも、トップで止まらずヘッドは加速し続けるから飛距離が伸びる。 少し前まで、日本は欧米のスイング理論に10年遅れていると言われていた。それが今では日本の若きプロコーチたちが世界に飛び出して勉強し、その差はどんどんなくなってきている。それとは全く別の流れで長井氏のようなゴルフを上達させる“天才”も現れた。Facebookのフォロワーは5468人、インスタグラムのフォロワーは3443人、YouTubeのチャンネル登録者数は1120人。知る人ぞ知る存在だったゴルフ界のドクター・ゲロが、世界に革命を起こすかもしれない。