再徹底された「怯まず、驕らず、溌剌と」…序盤退場で数的不利に陥った滝川二、AIE国際をPK戦で退けて3年ぶりの全国へ!!:兵庫
[11.10 選手権兵庫県予選決勝 滝川二高 0-0(PK5-3) AIE国際高 ユニバー記念競技場] 【写真】影山優佳さんが撮影した内田篤人氏が「神々しい」「全員惚れてまう」と絶賛の嵐 第103回全国高校サッカー選手権兵庫県予選決勝が10日に行われ、3年ぶり22度目の出場を目指す滝川二高と初出場を狙うAIE国際高が対戦。前後半で決着が付かずPK戦までもつれた一戦は滝川二が0-0(PK5-3)で勝利した。 6月に行なったインターハイ予選の3位決定戦で対戦した際は滝川二が2-3で敗戦しているため、2度目の対戦となった今回も厳しい展開になるとは予想していていた。実際、キックオフと同時に勢いよく攻め込んだAIE国際が序盤は押し込んで試合を進めていく。 「立ち上がりはAIE国際が前を狙っていたので前に蹴ったら良かったのにやっぱり選手は繋ぎたい。後ろから繋ごうとしたパスをかっさわられてピンチを招いていた」。そう振り返るのは小森康宏監督で、ロストしたボールを自陣まで持ち込まれた結果、ファウルを与えて前半5分と8分にはFKからゴールを狙われた。嫌な流れは以降も続く。11分にはスルーパスからゴール前を抜け出そうとしたAIE国際の選手をDF浜口巧成(2年)が倒してしまい、一発退場となった結果、10人での戦いを強いられた。 滝川二の対応は素早く中盤の選手に変えて、DF加野陽己(3年)を投入。システムを4-2-3-1から5-3-1に変えて、ブロック守備を固めた。やるべきことが明確になった分、選手はプレーしやすくなった側面もある。インターハイでは技術力の高いAIE国際の選手に翻弄されたが、「彼らは上手いので飛び込んだらかわされてしまう。じっくり行こうと伝えていた」(小森監督)今回は安易に飛び込まず、じっくり粘り強く対応することで自由を与えない。相手の攻撃のキーマンであるMF宮城丸(2年)に対しても、DF川上瑠巳(3年)が対人の強さを発揮した。 守備で試合のリズムを作ると、ボールを奪ってからはカウンターで応戦する。中でも「自分は足が速いし、縦への運動量も多い。守ってばかりではなく、自分が攻撃の起点を作らなければいけないと思っていた」と話すMF村松風亜(3年)のサイドアタックは、相手を押し返す意味でも効果的。24分には「10人だったので、一人剥がすプレーが必要になってくると思っていた」と振り返るMF三宅蔵ノ助(3年)がボールを奪った勢いのまま右前方に出てクロス。こぼれ球を粘り強く拾ってチャンスを狙ったが、シュートを打ち切れない。 後半もAIE国際の攻撃を耐える滝川二がカウンターからチャンスを伺う展開が続く。タイミングよく攻撃に出たDF酒井悠利(3年)の左クロスも効果的だったが、果敢にハイボールへのチャレンジを続けたGK釜田統生(3年)の牙城を崩せない。後半半ばからはJ2藤枝内定のMF河本大雅(3年)やMF知名禅太(2年)を入れてAIE国際が攻撃のギアを入れたが、両チームともに1点が奪えないまま80分間を終えた。 延長戦でも拮抗した展開は続いたが、延長後半10+2分にはAIE国際がチャンスを演出。右クロスのこぼれ球を繋いで、最後はMF杉浦煌仁(3年)が技ありなループシュートを放ったが、GK竹本航(3年)のファインセーブに阻まれ、0-0でPK戦を迎えることになった。このビッグセーブで勢いに乗った竹本は4人目のキックをストップ。対する滝川二は5人のキッカーが全員成功し、勝利を手にした。 滝川二は亀谷誠前監督が磨いてきたポゼッションサッカーを残しながら、プレー強度を高めてきた。2月の新人戦では8年ぶりに県の頂点に立つなど力はある。ただ、「関西の子が少なく、関東の子が多いので斜に構えるというか、少しシャイな子が多い。いくぞ!やるぞ!というのがない」(小森監督)ため、自分たちで気持ちを作って集中力を持続できなかった。夏休みの遠征で県外の強豪や大学生と良い試合ができても、わずかに生まれる空白の時間を突かれて敗れることがあったという。 空白の時間をなくすため、チームの礎を築いた黒田和生元監督時代から、大事にしてきた「怯まず、驕らず、溌剌と」というワードを選手に再徹底。空白の時間が生まれる原因は怯みなのか、驕りなのか追及し、隙のないチームへと成長と遂げていった。延長戦を含めた89分間を10人で戦いながら、得点こそ奪えなかったがチャンスを作れたのはこの1年間積み上げてきた財産が生きた格好と言える。 3年ぶりの選手権出場に欲も出そうだが、小森監督は「全国で1勝はしたい。一戦一戦が大事。上を見たら怯み、驕りが出て駄目」と控えめに話す。「怯まず、驕らず、溌剌と」滝川二らしく戦えば、この日同様に苦しい試合展開も乗り越えられるだろう。 (取材・文 森田将義)