チラシを手に笑顔のYS横浜事業部運営担当の永野北斗さん

　明治安田Jリーグが終盤戦を迎えている中、YSCC横浜（YS横浜）が過去最多となるホーム5000人の集客を目指している。「Challenge5000」と銘打ち、16日夕には横浜市中区の関内駅北口広場で1000枚のチラシ配りを実施した。 　運営担当を中心にクラブスタッフ、マスコットの「ハマピィ」、YS横浜をサポートする明治安田横浜支社のメンバーたちも加わった。駅前を行き交う人に対し、次のホーム戦となる10月26日の松本山雅FC戦（ニッパツ三ツ沢球技場）の告知チラシを笑顔で手渡した。ハマピィの姿に「かわいい」と立ち止まる母子の姿もあった。約2時間、日が暮れても続いた。 　YS横浜の事業部運営担当の永野北斗さん（22）は「乗降者数の多いエリアで配るということが、一番結果に直結するのではないかと思いました。明日（17日）は横浜駅西口で配ります」と疲れた様子も見せずに話した。 　なぜチラシなのか？　それはYS横浜の知名度の低さゆえ。この関内駅周辺であれば、プロ野球横浜ベイスターズや、バスケットボールBリーグの横浜エクセレンスのタペストリー（垂れ幕）やポスターが多くある。サッカーファンでなければ、世間の目に触れられることが少ない。「新規の方を増やすという意味でも、やっぱり挑戦ということです」（永野さん）。古典的な手法に見えるが、このチラシ配りは「地域特化型」として認知向上に有効な手段だ。顧客と直接接点を持てる心理的な効果が望める。 　今季リーグ戦で、ここまでのホーム16試合の入場者数は2万2011人。1試合平均1376人となっている（J3の20チーム19位）。ちなみに昨季は1試合平均1469人だけに93人のダウンだ。大都市・横浜には、マリノス、FCという人気クラブがあり、集客にはこれまでも大苦戦している。マリノスが今季1試合平均2万4310人と圧倒しており、J2横浜FCにしても6649人。大きく水をあけられている。 　YS横浜は現在60あるJクラブの中でも規模は最少。もともと人員が足りない上に近年はコロナ禍もあり、集客活動ができていなかった。ただ今年は4月17日にルヴァンカップで人気のFC東京と対戦したことで、ニッパツ三ツ沢は4083人を記録。クラブ史上最多となった。この数字に触発された永野さんら若いスタッフが奮起。「4000人の次は5000人を目指そう」との決意を固め、5000人チャレンジが始まった。 　高い壁であることには間違いないが、目先のターゲットとなる松本山雅はJ2昇格プレーオフへの進出を狙える位置におり、相手サポーターだけで2000人ほどの集客が見込める。それだけに、今季平均の1376人から1000人以上の上積みができれば、新記録更新となる。 　YS横浜を観戦する上での魅力とは何か。永野さんは「アカデミーの子どもが毎試合観戦にやってくるし、子どもの割合が多く、新規の方でも足を運びやすい雰囲気があります。それと選手との距離も近いので、すごく臨場感を味わってていただけると思います」。公式戦前のピッチで子どもの前座試合を企画したり、車いすの方をエスコート役に立てるなど、グラスルーツでの活動に熱心なクラブ。“親しみやすさ”も売りの一つとなっている。 　松本山雅戦のスペシャル・ゲストには「地元・横浜市中区出身」でポケモンのサトシ役で大人気の松本梨香さんが来場し、特別トークとライブを開催予定。新規ファン獲得へ、クラブスタッフは東奔西走している。 　残るホームゲームは3試合。その最初のチャレンジとなる松本山雅戦まであと10日と迫っている。スタッフの努力は実るのか。現在20チーム中18位と残留争いの渦中にいるチーム同様に、裏方たちの闘いもヒートアップしている。【佐藤隆志】