「世帯年収300万円台」家庭出身の東大生が痛感した「体験格差」の厳しい現状
なぜ「体験格差」は問題なのか?
みなさんは、「体験格差」という言葉を知っていますか? 実は今、これによって、受験での逆転が難しくなっていると言われています。 【写真】なんと、「低所得家庭の子ども」3人に1人が「体験ゼロ」の衝撃! 私は、家が貧乏だったので週3日アルバイトしながら受験し、逆転合格して東大に入学しました。「恵まれない境遇から一念発起して逆転合格する」。そんなストーリーは、もはや不可能になってしまうかもしれません。本書『体験格差』からは、そんなリアルな 未来を感じ取ることができます。 なぜ逆転合格が不可能になるのか? まず、 受験システムの激変を理解する必要があります。現在、受験では「勉強以外の体験」が重視される時代が到来しています。文部科学省の調査によれば、2021年度の入試では、50.3%の受験生が、学校推薦型選抜もしくは総合型選抜入試を利用しています。ペーパーテストは、もはや少数派なのです。 そうしたいわゆる「推薦入試」では、小論文や面接、研究計画などを基に審査されます。ここで重要になるのが「どれだけリアルな体験をしてきたか」です。 たとえば、貧困問題を研究したい2人の学生がいたとします。Aさんは図書館やインターネットを駆使して、様々な資料を読み、独自に研究を進めています。Bさんはそれらを済ませた上で、実際に東南アジアやアフリカ、南米のスラム街を回って、貧困に苦しむ人々の暮らしを視察しています。 この時、合格しやすいのはBさんでしょう。研究の際に一番信用されるのは、フィールドワークを通じて集めてきた一次資料だからです。動機は変わらずとも、自分が現地に行けたかどうかが合格を大きく左右する。「推薦入試」は貧困層が合格しにくいと考えられます。「体験格差」は、こうした現状を作り出すのです。 実際、私もこの格差を感じることがあります。東京大学でも9年前から推薦入試が行われていますが、推薦合格生の多くは幼少期から様々な体験を積んでいました。例えば、アフリカ社会の現状を学ぶために、高校生で現地に飛んで実地調査をした人。もしくは、海外から個人で珍しい動植物を輸入し、好奇心を磨き続けた人。資金力に欠ける学生は、どのように太刀打ちすればいいのでしょうか。 大学受験における「推薦入試」の割合はさらに増えていきます。法政大学は現在30%以上の学生を同方式でとっており、今後も拡大の予定。早稲田大学は2026年までに入学者全体の6割を推薦型入試で募集すると掲げます。国立でも筑波大学などは入学者全体の25%以上を推薦入試で選抜し、私立だけの話ではなくなりました。つまり、「幼少期にどんな体験をしたか」が入試の鍵を握る未来がすぐそこまで迫っているのです。