韓国、シンガポール、台湾、香港は出生率1.0未満!! "絶滅危惧国&地域"で起きていること
■台湾 「卵子冷凍補助」は出産率改善につながるか 次は出生率0.87の台湾。23年の出生数は13万5571人に対し、死亡数は20万5368人で、約7万人の自然人口減となっている。 出生率低下の原因はシンガポール同様、住宅難や教育費高騰などで結婚、出産を諦める人が多いため。台湾内政部によれば、台湾全体の平均初婚年齢は男性32.6歳、女性30.7歳(日本は男性31.1歳、女性29.4歳)。特に人口密度の高い台北では男女平均33.2歳と晩婚化が著しい。 台湾在住20年の貿易コンサルタント、河浦美絵子氏が言う。 「同僚の台湾女性で結婚しない人が多い。仕事が充実しており、マンションを持ち、不自由なく暮らしている。結婚してその自由を失うことが怖いという声をよく聞きます。 台湾では『嫁』という観念が根強く、嫁ぎ先の家族行事参加や義理の両親の介護も求められる。だから、結婚は損だというのです。これでは子供が増えるはずがありません」 台湾政府は18年に「我国少子化対策計画書」、21年に「0~6歳国家共有政策」を導入し、幼児に月額7000~1万3000台湾ドル(約3万3000~6万2000円)の保育費補助を次々と拠出しているが、なかなかめぼしい効果は出ていない。 そんな中で昨年から台湾の一部都市で始まった不妊対策が「卵子凍結補助」だ。卵子凍結とは、将来の妊娠・対外受精に備えて、若いうちに卵子を採取、凍結保存しておくこと。 女性がキャリア維持か出産かの「残酷な二者択一」を迫られることなく、保存した卵子で望んだ時期に出産することができる。台湾では昨年から台北市、新竹市、桃園市の3市が卵子凍結を希望する女性に補助金を支給している。 都市によって支給の条件や、その額は異なるが、新竹市では検査、卵子凍結、凍結した卵子の管理費などそれぞれに補助金が発生し、最大で総額3万1000台湾ドル(約14万8000円)までもらうことができる。 「現地の報道によると、新竹市では昨年5月からの9ヵ月間で889人の卵子凍結制度への申請があり、補助を受けた90%の女性がこの制度への支持を表明しています。一方でこの制度には『女性に遅い結婚、出産を促し、結果的に出生率を悪化させる』といったような反対意見も多く、議論が続いています」(河浦氏) 日本でも不妊治療の一環として昨年10月から全国で初めて東京都が卵子凍結助成金の支給(最大30万円)をスタートしたが、本格導入はこれからだ。台湾の知見は参考になるはず。