あの菓子の包装紙も描いた画家・横井照子さん 愛知で展覧会と映画
戦後、船で米国に渡り、スイスで生きた画家・横井照子さん(1924~2020)の展覧会が、故郷の愛知県津島市で始まった。生誕100年を記念して、市が企画。担当者は「郷土の芸術家を知ってほしい」と話している。 【写真】映画「Teruko Yokoi-Art in the Making」から横井照子さん=里信邦子スピリグさん提供 横井さんは名古屋市で生まれ、その後まもなく津島市に移った。6歳のころから油絵の手ほどきを受け、県立津島高等女学校(現・県立津島高校)を卒業後に上京。1953年に渡米し、62年からスイスの首都ベルンを拠点に画家として活躍した。 日本の四季折々の草花や情景をモチーフに、抽象画を織り交ぜた作品が特徴。栗きんとんで知られる恵那川上屋(岐阜県恵那市)の包装紙やパッケージも横井さんが描いたものだ。 同社の鎌田真悟社長は、19歳のときに菓子修業で訪れたスイスで横井さんと出会い、親交を続けた。横井さんの作品を集め、2004年に「横井照子ひなげし美術館」(同市)を設立。今回展示される作品の9割以上が同館からの出展だ。 ひなげしの花を描いた《幸せ》4連作のほか、俳句が趣味だった書家の父親の影響で、和歌や俳句が登場する作品もある。 展覧会の前期は「軌跡」と題して年代別に作品を振り返り、後期は「世界」と題して横井さんの表現や世界観に焦点を当てる。 美術史家などとしてスイスで活動する里信邦子スピリグさんが制作した横井さんのドキュメンタリー映画も上映される。里信さんは横井さんについて「戦後間もなく、新しい画風を求めて米国に渡った。外国人であることや女性であることなど、さまざまな苦難にもめげず画家として一生を生きるという意志を貫いた」と話す。 作品は約50分。実際のインタビュー映像や作品、横井さんが暮らしていたころの津島市の写真などを盛り込んだ。同市民らから制作費の寄付を受けたといい、今回は「恩返しの上映」(里信さん)という。 展覧会「横井照子 その軌跡と世界」は津島市文化会館小ホールで10日まで。前期は4日まで、後期は6~10日。5日は作品入れ替えのため休み。入場無料。映画「Teruko Yokoi-Art in the Making」の上映会は3、4、9、10日のいずれも午後1時30分から。 映画は佐賀県唐津市や山口県下関市でも公開される。 里信さんは現在、映画と同じタイトルの本の自費出版の準備を進めており、来年1月の出版をめざしている。詳細は里信さんのホームページ(https://kunikosatonobuspirig.com/)。(小原智恵)
朝日新聞社