3Dプリンターでサウナ製造、高知 工期短縮、建設業の人手不足に対応
建設ベンチャーPolyuse(ポリウス、東京)と和(かのう)建設(高知市)は、高知県芸西村のグランピング施設で建設用3Dプリンターを使いサウナを造った。従来工法に比べて工期を2~5割短縮でき、省人化にも貢献するという。建設業の人手不足は深刻で、ポリウスの大岡航(おおおか・わたる)代表(29)は「テクノロジーで業界をアップデートしたい」と力を込める。(共同通信=鈴田卓) 2023年11月、土佐湾に面した「ナミテラス芸西」内にサウナが完成した。外観は緩やかな曲線を描いた円すい台で、地層のような模様が特徴だ。和建設の中岡竜太郎(なかおか・りゅうたろう)社長室長(35)が製造を思い立った。 砂やセメント、水などを混ぜ、程よい粘度のある独自開発の「モルタル」が材料だ。3Dプリンターがノズルから押し出し、バウムクーヘン状のブロック約60個を製造。それを積み重ねて外壁を造り上げた。 中岡さんは「地方の小さい建設会社だからこそチャレンジできた。高知出身の大岡さんを応援したい気持ちもあった」と振り返る。
ポリウスによると、一般的にコンクリートを固めるには型枠が必要だが、国内の型枠職人は高齢化が進み人手も足りない。3Dプリンターは型枠が不要で省人化や工程の効率化が見込める。 2033年までに道路橋や河川管理施設などの6割以上が老朽化するとの試算があるといい、少ない人手で補修を賄うには技術革新が欠かせない。ただ建築基準法は3Dプリンター工法やモルタルの使用を想定しておらず、安全性の立証などが必要となりクリアするのは簡単ではない。ポリウスはサウナ内に鉄骨を配し、現状でも容認される方法で建設した。 海外では建設用3Dプリンターの市場規模が32年には77兆円まで伸びるとの推計もある。日本も後れを取らないよう、国土交通省は2023年に検討委員会を立ち上げ、論点の洗い出しを進めている。大岡さんは「土台となるルールがない状態。技術発展の邪魔をしない体制づくりが必要だ」と指摘する。 サウナ外壁の材料などの費用は、ブロックを製造した2022年夏の段階で約800万円。材料を見直すなどのコストダウンで現在なら3分の1程度に抑えられるという。大岡さんは「3Dプリンターにしかできないこともある。全体を比較して費用対効果を検討してもらえれば」と提案している。