中堅社員の心に火をつけた、楽天球団・若手社員の「斬新な集客アイデア」とは?
■ 若手社員が「新しいアイデア」を試せる組織風土を用意せよ ――著書では、立花さんが「観客動員数を増やす」「黒字化を果たす」という旗を掲げ、皆が本気でぶつかり合う“ドタバタ劇” を描いています。このような活気ある組織風土はどのように生まれたのでしょうか。 立花 観客動員数を増やし、黒字化を達成するためには「新しいアイデア」が必要です。そうしたアイデアの多くは若手社員が持っているため、彼らの斬新な発想をいかにして生かすかが鍵になります。しかし、入社から3年目も経つと徐々に平凡なアイデアしか出なくなります。そこで、新たな風を吹き込むために新卒採用を始めました。 例えば、韓国の野球場で行われている「ウォーターフェスティバル」というイベントを知った若手メンバーは「面白いから見に行こう」と、韓国まで足を運びました。観客に水鉄砲を使って水をかけ、皆でずぶぬれになって騒ぐイベントです。彼らは盛り上がっている様子を動画に撮影して企画として上げてきたため、私はその熱量に押されてGOサインを出しました。 いつでも新しいことにトライをするのは若いメンバーです。より純粋な気持ちで面白さを感じ、お客さまが楽しめる企画を発案します。さらに、そうした若手の姿を見て中堅社員の心にも火がつき、組織が活性化していきました。 もちろん、全てのアイデアがうまくいくわけではありません。失敗することもたくさんあります。しかし、会社としては失敗を恐れず、トライ・アンド・エラーの場をきちんと用意することが、活気ある組織風土をつくる上での鍵だと思います。
■ 強い組織に不可欠な「社員の熱量」をいかに生むか ――著書では、楽天野球団の「組織力」を象徴する出来事として、2013年にイーグルスが日本一を決める前夜の出来事に触れています。想定を大きく上回る人数のファンが球場周辺に殺到する中、社員が部門の壁を越えて対応に当たり、現場の混乱を収めたというエピソードですが、こうした組織力を育むためには何が必要なのでしょうか。 立花 プロ野球選手と同じで、企業の社員も「ここぞという場面」でチャンスを与えられて、結果を出すことで自信を付けていきます。仮に最初のチャンスを生かせなくても、次のチャンス、また次のチャンス、と機会を与え続けることが重要です。 そして、組織を強くするためには社員一人一人を信頼し、たくさんの成功体験を積ませて自信を持たせることが必要です。これを繰り返し、全員のやる気と熱量を上げることによって「組織力」が育まれます。 一方で、どのような社員でも入社から数年も経つと熱量が下がります。その原因は主に会社にあるわけですが、一度下がった熱量をもう一度上げることは十分可能です。そのためにはリーダーが企画や戦略の引き出しを大きく持ち、新しい取り組みにトライさせることが必要だと思います。一度心に火がついたメンバーは、自らどんどん動いてくれます。 もちろん、仕事を進める上で「英語を話せる」「数字やデータの処理能力が高い」といったスキルは重要でしょう。しかし、これらの多くは外部のパートナーに任せることができるのです。一方で、「熱量」だけは外注することができません。だからこそ、「熱量をいかにして引き出し、育むか」が組織の力を伸ばすためのポイントになります。 リーダーが社員一人一人の人格やパワーを信じて向き合うことで初めて、リーダーを信じてついてきてくれます。そうしたリーダーの姿勢や行動が結果として、強い組織を育むと考えています。
三上 佳大