なぜ新iPhoneにワクワクしなかったのか? 小泉進次郎氏の発言から考える
10月13日と14日の2日間、国内外の企業経営者や有識者がマーケティングをめぐる様々なテーマでディスカッションを繰り広げる「ワールド・マーケティング・サミット・ジャパン2015」が開催され、オープニングセレモニーには衆議院議員の小泉進次郎氏が登壇。復興政務官として、東日本大震災で被災した東北地方の復興支援に関わってきたエピソードなどを紹介しました。そこでの小泉進次郎氏の発言をもとに、iPhoneをはじめとするデジタルの世界が直面している課題を紐解きます。
「イノベーション」という言葉の本当の意味とは何か
2013年9月から2年余りに渡り内閣府で政務官として被災地の復興や地方創生といった政策に関わってきた小泉氏は、「地方都市を活性化させて人口減少を食い止めたり、被災地の復興を成し遂げたりといった大きな課題の解決に立ち向かう中で、“マーケティング”という言葉に遭遇するシーンが意外にも多かった」と振り返りました。 例えば、岩手県紫波町では“ピンホール・マーケティング”という手法を使って過去に例のない地域再開発を成し遂げたといいます。「岩手県紫波町では、町が所有している土地を民間企業や団体が活用して宿泊施設や役所、道の駅など様々な施設(オガール紫波)を作りました。中でもピンホール・マーケティングが活用されたのは、世界大会の基準を満たす床設備を備えたバレーボール専用の体育館を建築したこと。仮に野球やサッカーの専用設備を作っても、全国にある同様の設備との競争に勝つのは難しい。しかし、日本中のどこにもないバレーボール専用の体育館を建設すれば、全国からこの施設を使いたい人たちが集まってくれるだろうと考えたのです。そうしたマーケティングの発想でこの施設を完成させたところ、今や日本全国から学生や実業団のチームが集まり“バレーボールの聖地”となるような動きがみられています」(小泉氏)。 この取り組みが示唆しているのは、多くの人の共感を得るためにはマーケティングという作業が不可欠であり、そのマーケティングが成功したときには予想もしなかった化学反応が生まれるということです。小泉氏はこの点について、「マーケティングの本質とは問題を解決することであり、マーケティングのないところにイノベーションは生まれない。そして、イノベーションのないところに経済の成長は生まれない。その本質を政務官としての活動の中で実感することができました」と語っています。 岩手県紫波町では、全国のバレーボールチームというターゲット(顧客)の課題=本格的な競技環境で練習したいというニーズに対して最高の環境を用意して応えたことで、ターゲットの課題を解決するものとして評価されました。つまりイノベーションとは、想定したターゲット(顧客)が抱える課題を解決するために生み出され、需要と供給が噛み合うことで様々な市場が発展する原動力となるのです。この体育館が完成したとき、全国のバレーボールチームは「ぜひ使ってみたい」「こんなところで練習してみたい」ときっとワクワクしたことでしょう。