大谷翔平選手「妻の写真」公開は“過熱報道”回避?「有名人のプライベート情報」はどこまで守られるべきか
「私生活の平穏」という精神的な損害への評価は難しい
有名人のプライベートを追いかけるこうした報道は法的な視点から見て、問題はないのか。メディア情報関係に詳しい杉山大介弁護士は、「本来、有名人のプライベートは守られるべきなのですが、守られていない実情があります」としてこう話す。 「法的な原則論を貫くと、基本的にはうそではなく事実を伝えているので、〝事実だけど有害である〟という法的評価を行うのには、どうしても抑制的になります。法を使って強制できるのは権力者であり、事実を伝えてはならないことがルール化されていくのには、どうしても濫用の危険が伴うからです。 仮に、プライバシー侵害としての違法性が認められたとしても、名誉毀損(きそん)と異なりプライバシー侵害は刑事事件にならず民事事件の問題になり、損害額の評価が難しくなります。あくまで日本の損害賠償は、失ったものを損害と認める形をとっていますから、私生活の平穏という精神的な損害は、金銭的な評価がしにくいところです。 そのため、『違法でも報道した方がトク』という結論がありえます。結論として、法的には守られるべきという位置づけにありつつも、守られない運用がなされている訳です」 つまり、プライバシーの侵害は刑事事件にはならないので、名誉毀損にならない限り〝報じたもの勝ち〟という危険性を孕(はら)んでいる訳だ。しかし、一口に有名人と言っても、政治家、芸能人、プロスポーツ選手とさまざまだ。そのあたりを杉山弁護士に聞いてみると… 「政治家は、多くの一般人の代表として国のルールを決めるのだから、人格面まで含めて、国民は正確に認識して投票による選出を行えるべきなので、原則制限なく報道されてしかるべきです。芸能人関係は難しいところですが、著名さゆえにその名前や登場に経済的価値がひもづいている以上、やはり知られるところで利益を得ている分、一定の悪いことや嫌なことを知られることも許容しなければいけないようには思います」 ある程度は、〝有名税〟として甘受しなくてはならない側面もあると言えそうだが、それも度を過ぎると問題に発展することもある。