ダメな管理職は部下に「積極的になれ」と言う。じゃあ、いい管理職は何と言う?
「ダメな管理職は部下に『積極的になれ』と言う」 そう語るのは、これまで4400社以上の導入実績があるマネジメント法「識学」の代表を務める安藤広大氏だ。著書『リーダーの仮面』『数値化の鬼』『とにかく仕組み化』シリーズ三部作は、「会社員人生が楽になった」「本音ばかりが書いてある」と話題になっている。部下の育成や日々の管理業務などで悩むリーダーたちに「判断軸」を授けている。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、注目のビジネススキルを解説する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健) ● メリットがあるから「人とつながる」 あなたの会社では、「積極的になれ!」という言葉が飛び交っていないでしょうか。 部署を横断して何かに取り組むときを思い描いてください。 これは、あるメーカー企業の営業の話です。 自分の部署の商品を扱うのは、当然のことです。 ただ、その営業先で他部署が扱う商品が売れそうなときがあります。 そのときに、次のような2つの考えが浮かぶはずです。 「自分には何のメリットもないから、まあいいか」 「いや、会社全体の売上につながるから、やったほうがいい」 そういう葛藤です。 そのときに、必ず後者の考えを採用し、他部署に紹介してつなげているそうです。 なぜなら、その後、商談が成立したら、最初に紹介した人に評価が与えられるからです。 仕組みがあるから、人は動き、部署を超えてつながるのです。 もし、これが精神論によって、 「自分の会社の商品にはすべて詳しくなるべきだ」 「部署を横断してコミュニケーションをとりなさい」 「愛社精神があればできるはずだ」 などと言われても、主体性がある一部の人しか動かないでしょう。 仕組みがあり、メリットがあるから、人は動くのです。 ● いい管理職ができることとは? そもそも部署に分かれていることを疑問視する人もいます。 しかし、部署が分かれて自分の役割が明確になるから、仕事に集中できるのです。 タテ割りが基本です。そこでよくない問題が起こっているなら、横断する仕組みで解決するしかありません。 部署を超えて新プロジェクトが起こる場合も同じです。 そこでの責任者を新しく立て、新たなピラミッド組織の形をとります。 構造は、同じです。フラットな状態のほうがスピードが速くなりそうな錯覚がありますが、実際は違います。 うまく動ける一部の人にとって進めやすくなるだけです。 本当に大事なのは、どんな人も生かすことです。 そのために、組織としての仕組みを整え、動けるようにするのです。 「いい人」だからやるわけではない。 「積極性がある」からやるわけではない。 ダメな管理職は、「積極的になれ」「主体的になろう」ということを言ってしまいます。 しかし、それでは何も動きません。 動かざるを得ないようにするため、「ルールを変えます」「仕組みを作ります」ということを言い出せるかどうか。 いい管理職は、それをやり続けるのです。 (本稿は、『リーダーの仮面』の著者・安藤広大氏が特別に書き下ろしたものです) 安藤広大(あんどう・こうだい) 株式会社識学 代表取締役社長 1979年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社NTTドコモ、ジェイコムホールディングス株式会社(現:ライク株式会社)を経て、ジェイコム株式会社にて取締役営業副本部長を歴任。2013年、「識学」という考え方に出会い独立。識学講師として、数々の企業の業績アップに貢献。2015年、識学を1日でも早く社会に広めるために、株式会社識学を設立。人と会社を成長させるマネジメント方法として、口コミで広がる。2019年、創業からわずか3年11ヵ月でマザーズ上場を果たす。2024年9月現在、約4400社の導入実績がある。主な著書にシリーズ累計150万部を突破した『リーダーの仮面』『数値化の鬼』『とにかく仕組み化』(いずれもダイヤモンド社)がある。
安藤広大