走りを磨いた「日産セレナ オーテック スポーツスペック」18万円差で専用チューンは破格のコスパ!
セレナAUTECHに新たに加わった「SPORTS SPEC」は、17インチタイヤの装着のほか、ボディ、サスペンションおよびパワーステアリング特性のチューニングに加えて、上質な乗り味を実現したほか、専用チューニングコンピューターにより、e-POWER車ならではのパワフルで気持ちのよい加速フィーリングにさらに磨きをかけたという。モータージャーナリスト岡本幸一郎がレポート。 TEXT:岡本幸一郎(OKAMOTO Koichiro) PHOTO:宮門秀行(NIYAKADO Hideyuki ) 【写真】足回り&ボディ剛性を強化したセレナ オーテック スポーツスペックの詳細画像 もうひとつの オーテックとなる「スポーツスペック」登場 オーテックでは、これまで蓄積してきたノウハウと創造性を活かし、ベースとなるクルマのデザインや質感、走行性能をより高めたカスタムカーをいくつもラインアップしている。 セレナについては、2005年にC25の時代に「Rider」を送り出し、ミニバンに付加価値を求める層に大いに受け入れられてきた。2017年のC27からは名称を「AUTECH」に変更して現在にいたる。 そんなAUTECHに、もうひとつの AUTECHとなる「SPORTS SPEC」が加わった。17インチタイヤの装着のほか、ボディ、サスペンションおよびパワーステアリング特性のチューニングに加えて、遮音性能を向上させ、優れた操縦安定性と後席の同乗者にも考慮した上質な乗り味を両立したほか、専用チューニングコンピューターにより、e-POWER車ならではのパワフルで気持ちのよい加速フィーリングにさらに磨きをかけたという。 価格はベースのAUTECHの420万円の18万7000円高となる438万7000円と、意外と控えめだ。ご参考まで、AUTECHと基準車の「ハイウェイスターV」(価格373万6000円)に対して46万4000円高く、プロパイロット2.0などが標準装備される最上級モデル「LUXION」(価格484万8000円)に対しては、46万1000円安いという関係となる。 AUTECH SPORTS SPECには、パワートレーン、足まわり、ボディ剛性から快適性にいたるまでトータルで手が加えられていて、AUTECHに対して走りに関するところでは、コンピュータ、サスペンション (スプリング、ショックアブソーバー)、ボディ補強(フロントクロスバー、リアクロスバー)、アルミホイール&タイヤ、電動パワーステアリングが専用とされ、さらにパフォーマンスダンパーが追加されている。このほか静粛性向上のため、フロントまわりのガラスが遮音性の高いものに交換されている。 もはや別物の操舵感、狙ったラインが一発で決まる 外見でAUTECHとの判別のつく違いは少なく、内外装のエンブレムと、前述のアルミホイールの径が16インチからセレナで唯一の17インチとなり、色がダークグラファイトとなることと、タイヤが215/55ZR17サイズのミシュラン「PILOT SPORT 5」になることぐらいだが、走りは大きく変わっている。横須賀の追浜にあるグランドライブには、一般道路を再現しした1周約4kmのコースを、30~100km/hの速度標識にしたがって走ってみただけでも違いは明白だった。 まず加速フィールがかなり違う。ストレスのない扱いやすい加速フィールを目指し、普段使いでアクセル開度が半分ぐらいでもっともよさを感じられるとの説明のとおり、普通に走っても気持ちよく感じられる。扱いやすさを損なうことなく全体的に力強さが底上げされていて、速さを実感できるようになっている。 ドライブモードごとの走りは、ECOモードに変更はなく、STANDARDモードではレスポンスを変えず加速の力強さと伸びを強化してベース車のSPORTモードに近い特性とし、SPORTモードでは力強さと伸びをさらに強化するとともにレスポンスも強化している。 足まわりは、市街地では雑味のない上質な乗り心地を、高速道路では操舵応答を速めてキビキビと走れるようにしながらも、舵の据わりがよい操舵フィールと安定したレーンチェンジを、ワンディングではロールを抑えて接地感を確保し、コントロール性に優れ余裕のあるコーナリングを実現すべく、どんなシーンでも安心感のある質の高い走りを目指してチューニングされている。 そのため、具体的にはスプリングのバネ定数をフロントを約15%、リアを約20%高めてダンパーの減衰力を最適化し、タイヤをインチチアップするとともにミシュランのパイロットスポーツ5に履き替えたほか、電動パワーステアリングの特性が専用にチューニングされている。 さらに、フロントのサスペンションメンバーステーおよびクロスバーを追加し、リアのクロスバーの径と板厚を上げて車体剛性を高めるとともにパフォーマンスダンパーを装着して、安定性と不整路での質感の向上を図っている。 これらにより走りは別物になっている。ベース車でやや見受けられた、ステアリング切り始めの応答遅れが払拭され、一体感が増していた。操舵したとおりに動いてピタッと舵角が決まり、修正舵を要することもなくイメージしたとおりにまさしくオン・ザ・レール感覚でラインをトレースしていける。 乗り心地や静粛性も優れている 乗り心地については、段差や凹凸や荒れた路面を走ると多少の硬さ感じ、2列目では振動もそれなりに出ているが、大きめの入力があっても響かずに振動が瞬時に収束するので、それほど気になるものではない。むしろ、これだけスッキリと気持ちのよいハンドリングが実現できているのなら、それでよいのではないかと思えた。 同乗者との会話が楽しめるよう静粛性にも配慮されて、前席まわりのガラスの板厚アップに加えて、ダッシュロアインシュレーターが追加されているので、外界からの音だけでなく、パワートレーンの音も抑えられている。 セレナAUTECHの特別感のある内外装に惹かれる人は大勢いるが、そこにこうして走りにおいても特別感のあるSPORTS SPECのような選択肢が加わったことを大いに歓迎したい。これで価格差がわずか18万7000円というのは、“破格”だと思う。
岡本 幸一郎