ホンダ「ベンリイ」のルーツは1950年代!? 125ccでも免許不要で乗れる「便利」なバイクだった
元祖「ベンリイ」は、1950年代の最先端技術の塊だった
ホンダ「ベンリイ」と言えば、2024年4月時点では原付1種/2種のビジネススクーターのモデル名で、新聞配達や食品デリバリーなどで活躍しています。ホンダのビジネスバイク=ベンリイと連想する人もいると思いますが、その元祖は1953年にまでさかのぼります。 【画像】ホンダ「ベンリイJB型」(1955年型)の詳細を画像で見る(11枚)
戦後間もない浜松の焼け野原に、簡素な本田技術研究所の看板が立ちます。スピリッツ的にはこれがホンダの創業開始と言えますが、なんと10年も経っていない1953年に現代型の本格的バイク「ベンリイJ」の発売を開始します。 当時の時代背景としては、戦後から数年は自転車に取り付けるエンジンがよく売れました。「バタバタ」と呼ばれたその乗りもので物を運び、販路拡大のために営業にとび回った時期が落ち着くと、少し経済的に豊かになった国民の間では、より速く、遠くに行けるバイクを買う余裕が生まれます。各バイクメーカーは排気量の大きなバイクを商品展開するようになりました。 ホンダ創業時期としては後発でしたが、「カブ号F型」(自転車に取り付けるエンジン)などのヒットで一躍トップメーカーの仲間入りを果たし、1952年には4億5000万円の輸入工作機械を購入して工場を3つも建設し、凄まじい勢いで発展していきます。 1949年にホンダで最初の自社製本格的バイクである「ドリーム号」を発売し、1951年に発売された「ドリームE型」では4ストロークOHVエンジンを搭載しています。 車体のフレームは鋼板を「コ」の字形に折ったチャンネル型で、リアショックの無いリジッド型(モデルチェンジの際にプランジャー型のリアショックを装備)は、現代の目から見ると前時代的なものでした。
そうしていよいよ「ベンリイ」の登場です。1953年発売の「ベンリイJ」は、排気量89ccの4ストロークOHVエンジンを、お菓子のモナカ合わせのようなフレームに搭載しています。 フレームの部材はそれぞれ鋼板をプレスして成形し、溶接で貼り合わせる製法で、その後の「スーパーカブ」や「ダックス」でお馴染みとなります。当時の走行性能に必要な剛性などのフレーム要件を、効率よく生産できる方式だったのでしょう。 「ベンリイJ」がユニークなポイントは、エンジンをメインフレームに固定せず、スイングアームの前方に設置した事です。一見すると普通のバイクに見えますが、スイングアームのピボットを支点に、エンジンと後輪が前後でシーソーように動きます。 シーソー式のリアクッションは、エンジンの振動を伝え難くする事で長時間連続走行の疲労軽減に効果があったようです。 初期型「ベンリイJ」のリアクッションはフレームとスイングアームの接合部付近にバネを設置し、作動を制御していました(現代のモノサスペンションと近い位置なのが興味深い)。 ステップはエンジンとともにスイングアーム側にあり、シートは車体側あります。この間が上下して路面の凸凹を吸収する構造だったのです。 このユニークな「ベンリイ」シリーズのシーソー式のフレームは、ホンダらしさの象徴とも言えるかもしれません。