明治生まれは無料で入れます…でも実際にいるの? 帝国ホテル玄関に新千円札・北里柴三郎の研究所も、「本物」展示にこだわる愛知・明治村の魅力に迫る
▽SLも現役、謎解きゲームでリピーターも 国内だけでなく、ブラジルにあった移民住宅なども現存している。1874(明治7)年にイギリスから輸入された蒸気機関車(SL)は、村内の移動手段として現役で活躍しており、乗車や撮影を目当てとしたファンも訪れる。 夫婦で訪れた岐阜県多治見市の会社員河村利隆さん(66)は年間パスポートを持つ常連だ。この日、乗車を楽しみ「ゆっくり進む昔ながらの乗り心地が良かった」と満足げだった。 明治村は、2024年5月に累計の来村者が5千万人に達した。ピークは明治への改元から100年だった1968年で、年間150万人を記録。この年は政府主催の記念式典も開かれ、国民的な盛り上がりを見せていた。1992年までは毎年100万人超を維持していたが次第に右肩下がりとなり、2002年には30万人ほどにまで落ち込んだ。 明治村の湯田晃久所長によると、かつては建物を外から眺め、説明を読むことがメインの一般的な博物館のような場所だった。来村者の減少を受けててこ入れし、内部に立ち入って楽しめる建物を増やすなど、見るだけでない体験型のコンテンツを増やした。
村内を回ってヒントを集める謎解きアトラクションは、内容を変えながら断続的に開催されている若者を呼び込む人気企画だ。1日でクリアできるものから数日かかるものまでレベルはさまざま。リピーターも楽しめるほか、問題を解くうちに歴史を学べるように構成されている。 ▽コスト大の大規模修繕、「後世に残す使命」 課題は老朽化する建築物の手入れや修理だ。三重県伊勢市から移設した「宇治山田郵便局舎」は、日本郵政と共同で約4億円を投じて4年に及ぶ大規模修繕を行った。湯田所長は「本物に触れることで私たちの暮らしのルーツを作った人々の熱量や物語を感じることができると思う。後世に残す使命がある」と村の維持を誓う。費用は入村料や有志の寄付金で賄いたいとしている。常連の河村さんも「歴史ある物の維持にはお金がかかると思うが、今後も続けてほしい」と応援していた。 ▽112~116歳の方お待ちしています ところで、SNSで話題となったような「無料で入村した人」は、過去にいたのだろうか。
明治村によると、2014年の1人を最後に10年間、明治生まれの人が入村した記録はない。国内全体の最高齢は1908(明治41)年に生まれた兵庫県の女性で今年5月に116歳の誕生日を迎えた。国勢調査を担当する総務省は明治生まれのみの人口は集計しておらず、現状で国内に明治生まれが何人いるのかは分からなかった。 明治時代が終焉を迎えた1912(明治45)年から112年。湯田所長は「相当ご高齢とは思うが、もし来村いただける方がいれば大歓迎。ぜひ当時の生活や思い出の話をうかがいたい」と話した。