明治生まれは無料で入れます…でも実際にいるの? 帝国ホテル玄関に新千円札・北里柴三郎の研究所も、「本物」展示にこだわる愛知・明治村の魅力に迫る
4月上旬、神奈川県内の110歳の住人が国内最高齢の男性になったと報じられた。生まれは大正2年。つまり、国内に明治生まれの男性はいなくなったことになる。ニュースを受けてにわかに話題になったのが、愛知県犬山市の「博物館明治村」だ。なぜならこの施設、明治生まれの人の〝入村〟を無料にしているからだ。X(旧ツイッター)などの交流サイト(SNS)では「無料で入れる男性、もういないの?」といった声が飛び交った。 【写真】200年前、江戸時代には「全身白ギツネ男」が実在した 医師シーボルトのお抱え絵師が残した日本は、「別世界」
ここでは日本各地に残されていた明治時代の遺構を展示している。ノスタルジックな雰囲気が漂う名称で、子どもから中高年まで幅広い年代でにぎわう、そんな村の魅力に迫った。(共同通信=平井森人) ▽「本物」にこだわり、移設した建築物 ある週末、名古屋鉄道犬山駅のバス乗り場は、明治村行きを待つ人で行列ができていた。「奥までお進みくださーい」。係員が呼びかける中、さらに人が加わる。家族連れから夫婦、若いカップルなどさまざまだ。列の後方にいた記者は、乗降口のドア付近に立って乗車するほかなかった。 明治村が開村したのは、今から約60年前の1965(昭和40)年3月。オリンピックが日本で初めて開催された翌年のことだ。戦争や高度経済成長に伴う再開発の波で失われつつあった明治建築を残すことが目的だった。東京・内幸町にある帝国ホテルの旧中央玄関をはじめ建造物が60点以上並ぶ野外博物館で、三重県庁舎など建物11点と、工作機械など産業遺産3点は国の重要文化財に指定されている。
「本物」にこだわり、建築物は元の所在地から移したものばかり。注目は、7月3日から発行が始まった新紙幣で千円札の顔となった細菌学者の北里柴三郎が東京・白金に建てた研究所だ。留学先のドイツの研究所にならったという洋風の建物に入ると、ペストや結核といった感染症との戦いの歴史や、北里の生涯を展示している。 建物の向きにもこだわる。顕微鏡を使う研究では、時間帯や季節次第で強さや角度が変わる南からの日光は不向きだといい、当時も研究室の窓は北側に設置されていた。明治村では、来村者が実際の使われ方を感じられるよう窓の向きを合わせている。 北里研究所内では9月29日まで北里のほか、渋沢栄一、津田梅子の新紙幣の顔3人に焦点を当てた企画展示も開催。村内の土産店には新紙幣を模したタオルも並び、盛り上がっている。研究所の建物は放送中のNHK連続テレビ小説「虎に翼」のロケでも使用されていて、問い合わせが増えているという。