国土は消滅の危機に…人口13万人の島国・キリバスでいま何が起きているのか
一時的な滞在であれば美しいオーシャンビューを眺められるが…
環礁であるタラワ島を構成するべシオ島とバイリキ島を繋ぐ幹線道路。この道路は日本の無償資金協力によって1987年に建設された。写真左側が遠浅の潟に面する穏やかなラグーンサイド、写真右側が外洋に面していて沖にいくほど深い青に変わるオーシャンサイドと呼ばれている。美しい海だが、泳ぐ人の姿は見られない。ほとんど観光化されていないのと、上下水道が整備されていないため海で用を足す人が多いのもその理由だ。
漁船からカメラを陸地に向けると、民家の建つ位置が海面からわずかの高さしかないことがわかる。リゾート地のような一時的な滞在であれば美しいオーシャンビューを眺められるが、ここで家族が生活していることを考えれば、不安でしかない。公共機関や政府関係者などの豊かな家にはコンクリートの防波堤が作られているが、一般的な家にはそれがなく土嚢などを家の前に並べている。
防波堤と水質浄化が期待できるマングローブ
ユニセフ(国連児童基金)の支援で、海岸線に植えられたマングローブの苗木。マングローブには海岸線の浸食を防ぐ効果があり、大潮のときには防波堤の役割も果たす。また水質浄化の効果も大きい。 遠浅の海では引き潮のときには、彼方まで美しい干潟が広がる。沖の潮溜まりには、魚介類を採る人々の姿があった。 ベケニベウ西小学校の子どもたち。一人一人の笑顔がとても素敵だ。大人たちはその澄んだ輝く瞳を「キリバス・アイ」と誇らしげに呼ぶ。 学校ではカリキュラムの一環として気候変動についても学んでいる。児童からは、年々激しくなるサイクロンなどの異常気象への不安が聞かれた。 「嵐のときに、すごく強い風が吹くようになった」 「家の周りの木が倒れるんじゃないかと心配になる」 小学校は海辺に面しており、海側に5メートルほどの防潮堤があるが、最近では大潮のときに海水がそれを超えてくることがあるという。 夕暮れに、キリバスの海は絶景を見せてくれた。干潮時に環礁が浮かび上がると、そこには楽しそうに水の上を渡る親子のシルエットがあった。見つめながら、このまま時間が止まって欲しいと思う。果たして、この風景は近い未来に失われてしまうのだろうか。 近年キリバスで進む井戸水の塩水化は、海水面上昇が影響していると考えられている。ユニセフは水と衛生の状況を改善する取り組みの他に、保健や栄養、教育など様々な分野で子どもたちのために支援活動を行っている。 写真=野澤亘伸 INFORMATIONアイコン日本ユニセフ協会のキリバス視察報告のパネル展が、東京・高輪のユニセフハウスにて11月5日から行われています(終了未定)。 https://unicefhouse.jp/ また全国巡回も予定されています。 岐阜県 開催 12月2日~16日 会場:みんなの森 ぎふメディアコスモス https://g-mediacosmos.jp/ 香川県 開催 2025年3月19日~4月2日 会場:綾川町立生涯学習センター https://takamatsu-udmap.jp/ud/2019021803833/
野澤 亘伸