増え続けるインターネット上の情報量に、「光海底ケーブル」がどう対処するか
中村 守里也(明治大学 理工学部 准教授) インターネットに代表される情報通信のネットワークを現在、支えているのが光ファイバの通信技術です。とくに海外とのやり取りにおいては、海底を這わす「光海底ケーブル」の機能が重要になります。流れるデータ量が指数関数的に増えるなか、私たちはこの状況にどのように対処していけばいいのでしょうか。 ◇世界に流れる情報の大動脈、光海底ケーブル 通信技術は無線通信と有線通信に大別されます。かつて海外との情報のやりとりは、無線通信である衛星通信をメインに行われていました。それに対し、現在主流になっているのが有線通信である光ファイバを使った海底ケーブル、「光海底ケーブル」です。 海底ケーブル自体の歴史は古く、最初に実用化されたのが、黒船来航より2年も前の1851年。イギリスとフランスの間、ドーバー海峡に、低速のデジタル信号を送る金属製の電信ケーブルが敷かれました。その後、世界各国を結ぶ手段として広がりますが、いくつかの問題がありました。一つは金銭面での問題です。国同士を海底ケーブルで結ぶとなると、莫大な費用がかかります。また、太平洋を横断するような長距離では、金属製のケーブルで実現できる通信スピードには限りがありました。それに比べ衛星通信は、1機を打ち上げるのに大変なお金がかかるものの、各国で共有することもできるため、非常に便利だったわけです。 とはいえ無線通信では、使える電波の周波数に制限が出てきます。空間には、ラジオ放送、テレビ放送、消防無線、警察無線など、さまざまな周波数の電波が飛び交っており、使える周波数は国ごとに法律で定められています。衛星経由で送れる情報量は限られてしまうわけです。それに対し光ファイバは、閉じられたケーブルの中でのやり取りになるため、1本敷けばさまざまな周波数を一度に使えます。しかも光は電波とは比較にならないくらい、高速で大容量の情報のやりとりができるのです。 光海底ケーブルは、1986年にイギリスとベルギー間に海底ケーブルが使われたのが始まりでした。そこから短期間で広がり、大陸間の情報のやり取りの割合は1995年に光海底ケーブルと衛星通信が50:50、2014年には99:1にまで置き換わりました。もちろん敷設するには、多くの費用がかかります。太平洋を横断させ、光海底ケーブルを日本からアメリカ西海岸まで敷くのに要するのは、およそ300億円以上とも言われています。ただ、1本で膨大な情報量を送れるため、何百億というお金がかかっても、複数の会社で出し合えばペイできるわけです。 一方で、無線通信がなくなることもないでしょう。衛星通信の利点は、例えば太平洋の真ん中の船からでも通信ができるところです。また、飛行機内でもインターネットが使えるのは、衛星通信があってこそ。それらは、光ファイバ通信にはないメリットです。最近では、イーロン・マスクがスターリンクというプロジェクトで衛星を数千機打ち上げ、地球上のどこからでもすぐにインターネットが使える環境を整えました。有線と無線、それぞれの通信技術が、世界的にも使い分けられているのです。