「10年以上変わらず任せてもらえたのは、うれしい限り」。カープ・野村祐輔が抱いていた先発への思い
2024年9月27日、今シーズン限りでの現役引退を発表した野村祐輔。突然のニュースに多くのファンが驚き、引退を惜しむ声が溢れた。引退試合に向け、いつもと変わらず練習に臨む時期に聞いた、現役最後のラストインタビューをお送りする。(全2回/第2回) 【写真】新入団選手の会見に臨む野村祐輔(撮影は2011年12月撮影) ◆忘れられないのはデビュー戦と、25年ぶりのリーグ優勝 ─13年のプロ野球人生のなかで、一番印象に残った登板を聞かせてください。 「たくさんいろんな試合を経験させてもらいましたが、やっぱりプロデビュー戦(2012年4月1日・中日戦)が思い出に残っていますね。小さな頃から夢を見ていた場所でしたし、今までテレビで見ていた選手と対戦するわけですからね。高校、大学は年齢制限があり、年が近い選手としか対戦ができませんが、プロ野球は年齢に関係なく、日本のトップレベルの選手と対戦するわけですし、やはりプロ初登板は感動しました」 ─印象に残る対戦はありましたか? 「同級生と投げ合うことですかね。やはりプロ野球の世界で、同い年の選手と対戦することって、なかなかないと思うんですよ。中でも、大学のときから切磋琢磨していた菅野(智之・巨人)との投げ合いは意識しました。大学日本代表のときには同部屋でしたし、良きライバルであり、良き友人でもあります。プロで投げ合うときは、やはりうれしい気持ちがありましたね」 ─野村投手と同学年である1989年生まれの世代がカープの主力として活躍する時期があり、3連覇を達成しました。野村投手にとって同学年のチームメートはどんな存在でしたか? 「プロに入団した時期に違いはありますが、同学年ということで、やはり気になります。その頑張っている姿を見ると、自分もやらなければいけないと思わせてくれる存在です。特に3連覇していた時期はみんなが主力として試合に出ていたので、プレーしていて頼もしかったです」 ─さまざまな記録を残されてきましたが、野村投手の『誇れる数字』があれば教えてください。 「プロに入って一番最初に経験したのが先発でした。それを10年以上変わらずずっと先発でやれたことですね。自分のなかではすごく先発をやりたかったので、ずっとそこを任せてもらえたのは、うれしい限りですね」 ─2012年のプロ初登板初先発から、188試合連続先発登板のNPB新記録を樹立して以来、投げるたびに記録更新されました。先発へのこだわりがあったのですね。 「野球で投手を始めたときから、ずっと先発なので、そこはこだわりですね。デビューから先発として投げさせていただいて、日本記録をつくらせていただいて、名前を残すことができたというのはありがたい限りです」 ─野球人生でこだわり続けたこと、信念があれば聞かせてください。 「こだわりはあまりないですが、変化に気づけるように、と思ってきました。これは自分自身に対してです。変わることを嫌がる選手も多いと思うのですが、やはり変わっていくものですからね。そこにちゃんと気づけるように意識してきました。良いことがあると、それに捉われがちですし、悪くなったときに、良かった時の状態に戻したくなるものです。ですが『その状態ではない』となったときに、その時の自分に合ったもの、さらに勝負するために必要なものを追求していかなければいけないと、そう思ってきました」 ─カープでの13年間は、野村投手にとってどんな期間でしたか? 「カープでの13年間は夢の日々でした。本当に夢に見ていた世界でしたからね。そしてカープはにすごく可愛がっていただきましたし、本当にあたたかい球団です」 ─現役生活を終えますが、自分自身に言葉をかけるとすれば、どんな言葉をかけたいですか? 「そうですね、小さな頃から野球を始めて、29年間野球を続けることができました。本当に1年も空けることなくでしたし、そんな事ってなかなかないと思います。野球が好きで良かったなと思いますし、過去の小さい頃の自分に『野球に出会えて良かったね、野球をやらせてもらえて、本当に幸せだったね』と言いたいですね」 ─最後にカープファンのみなさんにメッセージをお願いします。 「13年間、本当にたくさんの方々に声をかけていただいて、背中を押していただいて、ここまで頑張ることができました。本当にみなさまの支えがあって、誇れる野球人生が送れたので、感謝の気持ちでいっぱいです。これまで本当にありがとうございました」 ■野村祐輔(のむら・ゆうすけ) 1989年6月24日生、岡山県出身。広陵高-明治大-カープ(2011年ドラフト1位)。広陵高時代は同学年の土生翔平、小林誠司らとともにエースとして3年春ベスト8、夏準優勝。高校卒業後は明治大に進学。1年春から登板し、秋には自責点0でシーズン防御率0.00を達成。4年春には通算300奪三振を達成し、明治神宮大会では優勝。大学通算30勝を記録。菅野智之(東海大)、藤岡貴裕(東洋大)らと共に「大学ビッグ3」と呼ばれるなど注目され、2011年ドラフトでカープに1位指名を受けてプロ入り。ルーキーイヤーから先発ローテとして活躍し、防御率1点台を記録し、新人王に輝く。2年目に初の二桁となる12勝をマーク。5年目の2016年には、右のエースとして16勝を挙げて最多勝に輝き、25年ぶりの優勝に大きく貢献。以降も先発としてチームを支え、リーグ3連覇に貢献。2019年以降は故障などもあり、登板機会が減少。2024年9月27日に引退発表すると10月5日に引退登板。デビューから211試合連続先発登板はプロ野球記録。
広島アスリートマガジン編集部