オードリー「東京ドームライブ」盛況の理由 若者に媚びず、ローカルな世界観で巻き込むラジオモンスター
等身大のパーソナリティー
オードリーのラジオと言えば、何よりも等身大のスタンスが特徴だ。長時間のトークによって必然的に素が出やすいメディアではあるものの、年齢や経験を重ねて変化していく部分まで露呈する番組は珍しい。 とくに番組スタート当初の若林は、感情の起伏をさらけ出すトークが記憶に残っている。『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の企画「じゃない方芸人」や「人見知り芸人」、『潜在異色』(日本テレビ)での南海キャンディーズ・山里亮太とのユニット「たりないふたり」のようにコンプレックスを笑いに変えるスタンスがラジオでも反映されていた。 しかし、ある時期から肩肘を張らない方向へと変化したように思う。業界でのキャリア、信用するスタッフを得られた余裕もあるのか、自然体でトークする印象が以前より強くなった。すっかり中年芸人になったこともネタの一つだ。春日はBS番組ばかり視聴する“BS男”と化し、若林は遠近両用コンタクトを購入しようとメガネ店に出向き年配者の眼科医に怒られたエピソードで笑わせる。 ハナから若者におもねる気などないのだろう。同世代の筆者としては、その潔さが痛快だ。そんな中年の彼らが東京ドームライブのオープニング映像として使用したのは、1990年前後に公開されたアメリカの野球映画のパロディーだった。 若林はケビン・コスナー主演の『フィールド・オブ・ドリームス』。人生の分岐点となる中年男性が、「それを作れば、彼がやってくる」という不思議な声を聞き、とうもろこし畑に野球場を作り始め自分自身を再発見するストーリーだ。若林はとうもろこし畑で不思議な声を聞いて困惑する主人公を演じた。まさに5年前の武道館ライブで燃え尽き症候群となっていた若林が一大イベントに挑む姿と重なる。 春日は『メジャーリーグ』。長年低迷していた弱小球団が、あることをきっかけにチームの結束力が高まり連戦連勝の快進撃を続ける物語だ。春日はメガネをかけてコントロールの悪さを克服する剛球投手(チャーリー・シーン)を好演。番組スタッフが有名なベンチシーンのパロディーを演じたのも印象深い。いかにもアメリカの豪快さを感じさせるコメディーは、春日のキャラクターにぴったりだった。