<リオ五輪>引退か、現役続行か? V4を逃した吉田沙保里が抱える問題
女子レスリング53kg級・吉田沙保里は、2020年東京五輪を目指すのか。 五輪4連覇を逃した日の翌朝、「次を目指したい気持ちはあるけれど」と一夜明け会見で発言したこともあって、その去就に注目が集まっている。吉田が東京五輪を目指すのは、現実的なことなのか。 まず、もっとも気になるのは彼女の年齢だろう。現在33歳、10月に誕生日を迎えれば34歳になる吉田は、東京五輪が開催される2020年8月には37歳だ。この年齢は、五輪で戦う女子レスラーとして不可能な年齢なのか。 IOC総会で2020年東京五輪開催が決まった頃、吉田はリップサービスも含めて「私も東京五輪を目指します」と公の場で何度も繰り返した。この発言は現実的なのかどうか、客観的な意見を知りたいと思い、日本ではない国のレスリングコーチにその実現可能性をきいたことがある。 すると「全然、問題ないですね」と即答された。 振り返れば、日本の女子レスラーにはあまり多様なロールモデルがない。そのため女子レスラーといえば、学生時代に日本代表になり、世界で活躍し、30歳くらいまで現役を続けた後に引退する、という選手ばかりだったことに気づかされる。もちろん日本にも例外がないわけではないが。 そう思ってリオデジャネイロ五輪での女子レスリングを振り返ると、38歳で銀メダルを獲得した選手がいた。女子72kg級の決勝で戦ったマニュロワ(カザフスタン)だ。彼女は、アテネ五輪にロシア代表として出場して銀メダル、ロンドン五輪ではカザフスタン代表として銅メダルを得ている。そして今回は銀メダル。吉田ならば彼女のように30代後半でも活躍することは可能だろう。
年齢の問題がクリアになるなら、課題となるのは、国内の代表選考を勝ち抜けることができるかどうかだ。現在、台頭しつつある若手といえば、今年4月に至学館大学へ入学して吉田の後輩となった、低い姿勢からのタックルが大きな得点源の向田真優(19)、技の引き出しが多く2010年ユース五輪金、2013、2014年で世界ジュニアを連覇している宮原優(22)、2015年のジュニア世界王者の入江ななみ(21)らがあげられる。なかでも、向田は、今年5月末に「吉田や伊調が現役続行していても、2017年の世界選手権は若手中心でゆく」と栄和人・日本レスリング協会強化部長が発言したとき、すぐにその筆頭候補として、名前が挙がるほど成長が著しく、将来を嘱望されている。 何より、向田は吉田を尊敬してはいるが、恐れていない。必ず自分が勝つときがやってきて、しかもそれは遠くないと信じてレスリングに取り組んでいる。来年すぐに吉田を追い越すことはできずとも、東京五輪の頃には、どうなるかわからない。若手の台頭に吉田が耐えられるかどうかは未知数だ。 そして最後に、もっとも大きな壁として立ちはだかるのが、吉田自身のモチベーションの問題だ。