進化する「AI審判」に「人間審判」はもう限界?社会学者「最後に責任を取るのは人間しかできない」その存在価値は
■海外のプロ野球界でも「AI審判」が試験導入中
野球でもテクノロジー判定が用いられつつある。米MLBでは2008年、日本プロ野球では2010年、本塁打限定で審判が必要とした時のみに導入。MLBで2014年、日本で2018年には、監督が判定に異議を唱える場合にビデオ判定を要求可能となった。2021年には米マイナーリーグで「ストライクorボール」の判定にロボット審判が使われ、メジャーでも検討されている。 AIと人間の判定がわかれて不満が生じる恐れもあるが、パックンは、「明らかにストライクなのに『ボール』と言っている審判に対する不満の方が、試合を壊している。10年後には、ストライク判定は100%機械でやっているだろう」と予想する。 米マイナーリーグでの実験では、「AI判定をそのまま審判員がジャッジする」タイプと、「審判員がジャッジした上で、不服の時だけ“チャレンジ”する」形の2パターンがあったが、「採用されたのは、チャレンジシステム。AI判定にすると、野球の競技自体が変わってきてしまう」と坂井氏が説明する。「ストライクやファウル、アウト・セーフのタイミングは、テクノロジーを導入した方が正確になるが、状況の判断はまだ難しい」。
■「AI審判」の苦手分野
『ABEMA Prime』では、判定へのスポーツテック導入について、YouTubeアンケートを行った(回答者数1万人)。結果は「全てAI」23%、「審判補助として使うべき」67%、「リクエストのようにチームが希望したら」7%、「人間審判だけ」3%となった。全てAI派からは「審判のバイアスで判定が変わってしまうなら、全てAIの方が良い」との反応が、人間審判派からは「人のプレイを人が判断するので良いのでは」との意見が出た。 AIにも苦手な判定はある。スポーツAI研究者の藤井慶輔氏によると、芸術点のある競技や、柔道などのように常に接触している競技、サッカーなど少し接触でオーバーリアクション(演技)をして倒れた時には判断が難しい。 兼近は「テクノロジーが追いつくのか」と心配する。「野球の場合、すっぽ抜けた球なら、頭部近くをかすめても、危険球退場にはならないが、AIは『狙ったかどうか』といった人間の感情を判断できず、一撃で危険球退場になるのではないか」と述べた。 塚越氏は「AIにも得意と苦手がある。競技ごとに技術向上に合わせて、毎年ルールが少しずつ変わっている中で、夢のようなシステムが、すぐできるわけではない」とみている。