「壁に押し潰される」幻覚に苛まれるイラン刑務所の”地獄の独房”…待ち受けていたのは《息が吸えなくなるほどの孤独》
いつ1日が終わるかわからない
――独房では、どのように自分を励ましていましたか? 励みになるようなものは何もありませんでした。心のなかで想像することしかできません。よく友人たちと一緒に話しているつもりになりました。話題は刑務所以外のことです。そうすれば外の世界とつながっていられると思いました。 尋問に連れて行かれる日は、少なくともやることがあります。尋問のない日は時間が静止しています。過ぎていかないのです。昼間に眠って夜になってくれることを願いましたが、実は昼と夜を区別する手段がありませんでした。いつ1日が終わるのか分かりません。独房のなかには時間を計る道具は何ひとつないのです。 刑務所に入る前は、たとえばバス停などで何時間も座って考え事に耽ることがありました。あるいはただ寝転がって、2時間ほど、とりとめもなく思いを巡らすこともありました。 しかし独房では、何かを考えたくなるような刺激は皆無です。いままでの出来事を思い出そうともしましたが、そのうち飽きてくたびれてしまいます。ふと我に返って改めて悲しくなります。しかも、人生の大切だったはずの出来事まで思い出せなくなっているのです。たくさんの物が乱雑に散らかっているなかから、何かを見つけようとしているのに見つからない、そんな感じです。 翻訳:星薫子 『看守や尋問官の「気まぐれ」では決してない…巧妙な「計算」のもとで囚人の「心理」を完全に操るイラン刑務所の意外な“実態”』へ続く
ナルゲス・モハンマディ(イラン・イスラム共和国の人権活動家・ノーベル平和賞受賞者)
【関連記事】
- 【つづきを読む】看守や尋問官の「気まぐれ」では決してない…巧妙な「計算」のもとで囚人の「心理」を完全に操るイラン刑務所の意外な“実態”
- 【前回の記事を読む】毛布を広げると「あるもの」が転がり落ちてきて...紙とペンすら禁止の「イラン刑務所の独房」で囚人の女性が発見した「秘密の通路」
- 【人気の記事を読む】イランで逮捕された女性「脇腹も背中も化膿」「乳首から黒い汁が」…女性刑務所で行われる「鬼畜の所業」
- 「無罪なのは知っている」…支離滅裂な尋問だけが繰り返されるイランの独房生活で「一番辛かったこと」
- イラン政府の「拷問」がもたらす「真の苦しさ」…可愛い双子と引き離され独房に監禁された女性が「見たもの」とは