「宇治抹茶」のおいしさに世界が気付いた! 火付け役はあの有名アイス、京都の茶問屋「バブル」
外国人の抹茶ブームを受け、茶卸売を手がける京都府宇治市内の「宇治茶問屋」が対応を強化している。新型コロナウイルス禍後に急回復した訪日外国人観光客が土産品を次々とまとめ買いするなど、需要が爆発的に拡大する中、小売業者への供給に注力。海外への卸売を新規開拓する動きもある。膨らみ続ける需要を支える茶問屋の「今」を取材した。 【画像】宇治茶は単価も取引額もぐんぐん上昇 ■高級抹茶の注文急増「あるだけほしい」 同市中心部に位置し、宇治茶販売店や飲食店などが並ぶ平等院表参道(宇治市宇治)。多く見られる外国人観光客が手にするのは、抹茶味のラテやアイス、団子などだ。 「抹茶のニーズはバブルと言えるぐらいだ」。平等院表参道の近くに事務所を構える江戸時代創業の茶問屋「丸宗」の入江宗輔社長(70)はうなる。抹茶ブームの火付け役とされるハーゲンダッツの抹茶アイス販売から28年。今や抹茶は飲料やスイーツで不可欠の味となった。 丸宗には、新型コロナ禍が落ち着いた昨春以降、訪日外国人客の土産品を扱う小売業者から注文が急増している。この小売業者に事情を尋ねると、1缶数千円の高級抹茶が「あるだけほしい」と数十個単位で売れるような状況だという。 「円安の影響もあり、数千円といっても訪日外国人は割安に感じるだろう」と入江社長。別の取引業者からは「北米に輸出できる農薬基準をクリアした抹茶がほしい」と求められ、供給量を毎年1トンずつ増やしている。 ■生産追いつかず価格高騰 好調な抹茶ニーズは茶市場の取引データにも表れている。 JA全農京都茶市場(城陽市寺田)では本年度、越冬後に最初に摘まれた「一番茶」の取引金額が市場開設以来初めて40億円を超えた。けん引したのが、抹茶の原料となる碾茶(てんちゃ)だ。 碾茶の取引金額は前年度から約10億円増の約30億円となった。取引量も増えたものの、その場合は通常下がるはずの平均単価が上がり、高級な手摘み宇治碾茶は1キロあたり2万円を超えた。 生産が追いついていないという見方もある。新型コロナ禍による消費不振を受けて茶農家は減産を強いられたが、「落ち込んだ状況が元に戻りきっていない。訪日外国人客数だけが急回復した結果、抹茶の品不足と取り合いが起こり、市場価格が高騰している」(茶業関係者)。 丸宗はこれまで碾茶を農家から直接仕入れることが主だったが、小売業者からの注文増に応えるため、市場経由での確保も増やした。その影響で、今年から小売業者への供給価格を引き上げ始めたという。 ■世界で「コーヒーのライバル」に? 海外への直接展開を強化する茶問屋も。「堀井七茗園」は2年前から米国や欧州、アジアなどの小売店に抹茶や煎茶、玉露などを積極的に卸し始めた。「売り上げは好調。国内への卸売が主軸なのは変わらないが、事業の一つに育ちつつある」と堀井俊太取締役(34)。 海外出張の機会が多いという堀井さんは「世界ではコーヒーを飲むように抹茶を味わう人がおり、『世界が抹茶のおいしさに気づいた』と感じる。抹茶ブームは加速する」と予測した上で、「今後も、品質がよいほんまもんの宇治茶を丁寧に海外に届けたい」と力を込める。