「銃規制は死んだ...」3Dプリンター銃「FGC9」開発者の正体が判明、謎の死と痛ましい「素顔」に迫る
野放しになる「ゴースト銃」
22年5月にイギリスのブラッドフォードで警察官が不審な乗用車に停止を命じ、車内からFGC9が1丁見つかった。運転していた男と2人の共犯者は闇市場で3Dプリンター銃を販売していた。 共犯者の家からFGC9の多くの部品も見つかった。翌年、3人は犯罪グループに3Dプリンター銃を供給しようとした罪で5~18年の禁錮刑を言い渡された。 フィンランドでは昨年、ネオナチの男3人がテロ行為を意図して銃器を製造・使用した罪で実刑判決を受けた。彼らはFGC銃をプリントして組み立て、移民家族の郵便箱を撃つ動画をネットに投稿していた。 現在、FGC銃が最も広く使われているのはミャンマーだ。軍事政権と戦う反政府勢力は、FGC9や銃身が長いタイプを、戦闘員が何十丁も製造して使っている映像を公開している。これらを政府軍への奇襲攻撃に使い、より高性能の従来型銃器を兵士から奪っている。 私が初めて3Dプリンター銃を知ったのは、19年10月にドイツでシナゴ―グ(ユダヤ教会堂)を襲撃した男が、犯行の様子を自らライブ配信したときだ。 ドイツ国籍のステファン・バリエット(27)は襲撃の直前に、犯行声明と、自宅で作った数十種類の武器の目録をネットに投稿していた。犯行の目的の1つはそれらの性能を証明することだと、彼は書いていた。3Dプリンターを使って作った武器もあり、設計ファイルもアップロードされていた。 ただし、バリエットの銃はよく故障した。犯行の配信中も自分の武器に悪態をついていた。施錠された門を突破できず、近くにいた2人を射殺して逃走したがすぐに逮捕され、終身刑を言い渡された。 その後、より信頼性が高くて有効な設計データがネット上で公開されるようになった。必要な技術はより安価に、より高性能になっている。 13年にウィルソンが最初の設計図を作成したとき、3Dプリンターの価格は約700ポンドだった。現在では初心者用モデルは4分の1の値段で購入でき、より安価で強力なプラスチックポリマーも容易に入手できる。さらに、熱狂的な愛好家のコミュニティーが初心者を手取り足取り指導する。 こうした自家製銃器の合法性は国や地域によって異なる。アメリカではヨーロッパと違って、個人が自身で使うために銃器を作ることは基本的に合法だが、販売には基本的にライセンスが必要だ。 ただし、ほとんどの3Dプリンター銃にはシリアルナンバーがなく、追跡困難な「ゴースト銃」になっている。ゴースト銃の所有はアメリカの大半の州で合法だが、規制している州もある。