【毎日書評】いま求められる最強リーダーの条件は?DX人材育成のヒント
チームの新しいスキル習得を導く
変化の激しい時代においては、機動的な経営を支える組織文化を自ら形成し、牽引する──。 これは著者が数多くのクライアントと議論する際に必ず出てくる、“ほぼすべての企業が願い、必要としているリーダーシップの形”だったのだそうです。 「顧客にどのような新しい価値を示し、届けるか?」を自問自答する企業やサービスは多数存在しますが、そこには変化を牽引するリーダーが必ずいるもの。したがって、そのようなリーダーたちは、企業の競争力そのものであるといえるわけです。 そんなリーダーたちが成果を出すためには、ことの大小に関係なく、組織を率いていくことが欠かせません。そして、そのチームが成果を出すためには、チームが持つ組織能力を進化させ続ける必要があります。 また、チームが培ってきた力に加え、時代や環境に合わせて新たな能力を獲得できるような変化が求められることにもなるでしょう。たとえばテクノロジーの進歩と社会経済への影響が大きい現在においては、テクノロジーにまつわる組織的能力を獲得することが不可欠になるのです。 テクノロジーといっても、ITの部署だけが対応すればよいわけではありません。 「顧客にどんな新しい価値を示し、届けるか?」と自問自答するすべての部署、経営企画部、人事部、営業部、製造部、すべての組織においてテクノロジーの影響、変化対応への取り組みは欠かせません。(101ページより) そのように、チームで新しい能力を獲得し、変化を先導するリーダーシップの形が「リスキリング・リーダーシップ」なのです。(100ページより)
リスキリング・リーダーシップに求められるメンタルモデル
リスキリングを推進していくリーダーに求められるのは、「過去の自分の成功体験によって組織を率いるリーダー像」ではないと著者は述べています。そうした旧来的なスタンスではなく、「自分にとっても未知のものである変化(テクノロジー)を駆使し、戦略の実現を図ろうとするリーダーの姿」だというのです。 私が尊敬する、とある企業の人事責任者の方はこうおっしゃっていました。 「リスキリングの推進には、個々人のスキルの違い、組織間のスキルの違い、あらゆる階層で違いを理解して活かしていく、ダイバーシティ&コラボレーションが重要になる」 なるほど、そうだと納得しました。(103ページより) 過去の自分の成功体験によって組織を率いるリーダーが、「チームで確実に成果を出すには、過去に成功体験のないやり方は積極的に取り入れるべきでない」と考えるなら、それは「自分と同質の人材と仕事をするほうが正しい」という判断になってしまいます。 一方、新たなテクノロジーを駆使して顧客から評価され、多くの売上や利益をつくり出すことを目指すのだとしたら、既成概念にとらわれることのないポテンシャルが生まれることになるかもしれません。 少なくとも、過去の自分の成功体験に立脚したスキルをインプットすることばかりに腐心していては、変化に対応することはできません。 テクノロジーによる変化を受け入れ、時代にあった戦略を常に考え続けるリーダーは、そのチャレンジにおいて必要なスキルをチームに装着し続ける必要があるのです。(104ページより) 時代に合わせた顧客の課題解決を考え続け、テクノロジー活用をつねに志向しているリーダーは、中期経営計画や全社の方針に呼応し、チームにチャレンジの機運を生み出すということ。 いま現場で活躍し、過去の成功体験に立脚して確実な成果を創出できるリーダーには、“顧客価値向上を本質的に考えてテクノロジーを活かせるリーダー”としての期待が寄せられているのだと著者は主張するのです。たしかに、そのとおりではないでしょうか?(102ページより) 著者によれば本書は、リスキリングを成功させ、組織変革を担うリーダーのための手引書。求められるマネジメントスキルをともに考え、実践していくための必携本となることを目指しているのだといいます。リスキリングを成功させたいと願うリーダーは、ぜひ一度、手にとってみたいところです。 >>Kindle unlimited、2万冊以上が楽しめる読み放題を体験! 「毎日書評」をもっと読む>> 「毎日書評」をVoicyで聞く>> Source: ディスカヴァー・トゥエンティワン
印南敦史