「おむすび」山本舞香 「『熱さ』で沙智に生命が宿った」
【牧 元一の孤人焦点】NHK連続テレビ小説「おむすび」に俳優の山本舞香(27)が演じる専門学校生・矢吹沙智が登場した。俳優の橋本環奈(25)が演じる主人公・米田結の同級生。初登校の自己紹介で「スポーツ専門の栄養士を目指しています」と明かした。 制作統括の宇佐川隆史さんは「現在描いている2007年当時、スポーツ栄養士はまだ世間に知られている存在ではありませんでした。スポーツ栄養士の夜明け前を描き、なおかつ、過去を持つ沙智を描くためには、演じる人に『芯の強さ』が必要でした」と話す。 山本はオーディションではなくキャスティングによって出演するに至った。 宇佐川さんは「この役をできる人は限られているだろうと思った時、まず山本さんの顔が頭に浮かびました。生意気な感じの役を演じた映画『恋は雨上がりのように』(2018年公開)が印象に残っていました。山本さんは心にしっかりしたものを持っている役、目標に向かってまい進していく役が多いという感じで、それらの役のイメージがキャスティングの時にすっと出てきたのです」と説明する。 山本はこれまで2016年公開の映画「桜ノ雨」、22年放送のドラマ「Sister」などに主演。今年10月にロックバンド「MY FIRST STORY」ボーカル・Hiro(30)との結婚を発表した後の主演作としては、中京テレビ開局55周年記念ドラマ「令和の三英傑!」(12月11、18日放送)がある。 宇佐川さんは「お会いしてみると、物腰が柔らかく非常に気を使う人で『私が朝ドラに出てもいいんでしょうか…』という感じでした。沙智は方言で話しますが、山本さんは撮影前に熱心に練習を繰り返していました。その愚直なまでの芝居への取り組み方を見ていると、当初の『芯の強さ』のイメージに加え『熱さ』を感じ、沙智に生命が宿った気がしました」と話す。 山本は朝ドラ初出演。普通なら現場で緊張するところだろう。 宇佐川さんは「山本さんは以前から橋本さんと仲が良く、橋本さんが現場にいることで安心感があったようです。この作品に出演したことには、橋本さんが座長を務めているドラマを盛り上げたいという意味もあったと思います。だからと言って現場で橋本さんとだけ話すのではなく、他の同級生役の人たちとも打ち解けて気軽に会話をしていました」と話す。 沙智の登場シーンは痛烈だった。ギャルのメークと衣装で教室に現れた結にいきなり苦言を呈し「あんた、なめとん?」とひと言。最初から結との対立関係を明示した。 宇佐川さんは山本の芝居について「複雑なものを抱えている沙智をどう表現するか、興味がありましたが、沙智そのものでした。感情の出し方などが非常に自然で敬意を抱きました」と称える。 NHKが事前に発表した資料によれば、沙智は「高校時代は有名な陸上選手」。それがどのようにしてスポーツ専門の栄養士を目指すようになったのか、そして、結との関係がこの先どうなっていくのか…。山本の芝居の進展に注目だ。 ◆牧 元一(まき・もとかず) スポーツニッポン新聞社編集局文化社会部。テレビやラジオ、音楽、釣りなどを担当。