困窮する国民をよそに”贅沢三昧”の汚職役人を引きずり下ろす!?…プーチンが恐れた男・ナワリヌイ氏が取った「冴えたやり方」
官僚のシャツの袖から高級腕時計
汚職に関してはどんなことでも理詰めで攻めていく手もあるが、私としてはもっと直接的な方法を好んで使った。例えば、大統領報道官が自身の結婚式で新婦にキスしている写真をよく見てみたら、シャツの袖から高級腕時計がのぞいていた。スイスのメーカーに問い合わせたところ、価格は62万ドル。5人に1人が貧困ラインである月収160ドルに満たないロシア国民の前に、この事実をさらした。月収160ドル未満はもっと正確に言えば「極貧」ラインである。こういう堕落した役人の厚かましさを目の当たりにした視聴者は激しい憤りを覚える。そこで、次の選挙で投票すべき地元候補を紹介するウェブサイトに呼び込む。役人の贅沢三昧を支援したくなければ、「こちらの候補に一票を」と呼びかけるのだ。 狙いどおりの展開となった。私たちは、「国を治める謙虚な愛国者たち」の暮らしぶりを暴くことで、ドラマとしての娯楽性も維持しつつ、視聴者の怒りに火をつけ、汚職の構造を解き明かしてプーチン体制にできる限りのダメージを与える行動を呼びかけた。ネタが尽きることはなかった。 映像素材はたっぷりある。シベリア地域のさまざまな都市の汚職について動画2~3本はYouTubeに上げられそうだ。私は、飛行機の窓の外を眺めながら、そんな思いを巡らせていた。動画を公開すれば数百万人が視聴する。そのうち数十万人はノボシビルスク州とトムスク州の住民だ。視聴者は動画を見て終わりではない。怒りに震える視聴者は、我々の呼びかけに応えて投票所に出向き、親プーチン派候補への反対票となる投票行動を取るはずだ。 『「この国では“運悪く”窓から転落することも珍しくない」…『プーチン体制』と戦い続けたナワリヌイ氏が明かした「災難だらけの日常」』へ続く
アレクセイ・ナワリヌイ、斎藤 栄一郎
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