はれて宇宙飛行士に! 米田あゆさん・諏訪理さん単独インタビュー
■冷静沈着の諏訪さん、秀逸な表現力の米田さん 2人の個性 私はこれまで米田さん、諏訪さんの訓練風景などを取材し、その中で2人の個性を感じ取っていました。諏訪さんで印象に残っているのは、その冷静沈着さです。 (畑中)諏訪さんは、なぜこんなに冷静沈着でいられるんだろうと。 (諏訪)そんなこともないですけど(笑) (畑中)自分で心がけていることは? (諏訪)何かあった時にワンテンポおいてからというのは少しは念頭においています。ワ~ってなった時に、頭に浮かんできたことを何も考えずにパッとやっちゃうと、なかなかうまくいかないこともあるという昔の経験もあるので。緊急事態的なことがあった時には、とりあえず何かしなきゃと思うのですが、ちょっとワンテンポおいて、ちょっと落ち着いて考えてみようというのを意識はしています。 一方の米田さん、8月の航空機のシミュレータを使った訓練では、宇宙飛行士の訓練について、「一つ一つ知っていくと、ピントがあったような感じがしていく。そうすると、解像度がより深くわかるようになっていく」と話していました。「ピントが合う」という表現は報道陣をうならせるものでした。 (畑中)「ピントが合ってきた」という表現が秀逸だと思ったが、表現力の点で気を付けていることは? (米田)何かに例えたら伝わりやすいとか、そういうことは普段から思ったりしています。あとは、物を擬人化してみるとイメージが伝わりやすいかなと思っているので、比較的表現として使うことは多い気がします。 (畑中)非常にラジオ向き……。 (米田)よかったです(笑)。でも表現力の面でもまだまだこれからだなと思っているので、訓練をがんばっていきたいです。 (畑中)宇宙飛行士としての“ピント”は合ってきたか? (米田)振り返ってみると、基礎訓練を始めたころよりはピントが合っているなとは思っていますが、カメラの技術が進んでいくという感じかもしれません。いまはいま時点でのピントの合い方をしていますが、これからさらに細かいところまで見られるようなピントが合ってくるんじゃないか、合わせていかないといけないなと思います。 ■月面探査への思い、AIとの関わり、そして、さらなる成長へ (畑中)宇宙に行ったら、月に行ったら何をしたいか? (諏訪)宇宙か月かわかりませんが、3つ興味があります。一義的には宇宙開発、科学の成果の創出が重要ですし、低軌道だったら今後の惑星探査に向けての技術実証があると思います。科学や技術の進展の先端の部分に関わらせてもらうのはワクワクしますし、楽しみながらやっていきたいと思います。 あとは私もそうでしたが、宇宙飛行士が宇宙から地球を見てどう思ったかを伝えていただくのはモチベーションもわくし、インスピレーションもわく、自分が見てどう思うのか、どういう言葉で伝えられるのか、非常に楽しみにしています。 3つ目は無重力の中で生活をして仕事をするってどんなことだろうというのは本当に楽しみで、ありとあらゆること、宙返りから宇宙食を空中に浮かして食べてみるということ、重力があるとできないことをすべてやってみたいと思っています。 (米田)スリム(月探査機)とか、アポロで実際に月面に行かれた方の、ある種、偉大な成果、跡が月には残っていると思うと、不思議な世界だと感じます。そこでわれわれが行って新しい歴史を刻むということですね。それはすごくワクワクしますし、これでアルテミス計画の中で、これから人類が月だったり火星だったり、より長期に滞在するということを今後見通していくと思うんですが、そこでの生活だったり、もしかすると、植物を育てたりするのかもしれません。そういった、“月産”の野菜だったり、新しいものをトライしてみたいと思います。 (畑中)月に行くころには、AIと仕事をしていく時代も来るのかなと思いますが……。 (米田)これからの時代、AIの力を借りて、借りずにいる人類よりもAIの力を借りて、成長する人類の方が圧倒的に進歩のスピードが早くなっていくと思うので、宇宙開発の側面においても、AIの技術をより積極的に取り入れていくべきだと思います。 (諏訪)アポロの時も、最初コンピュータプログラムを導入するので、テストパイロットの人たちに非常に抵抗があったという話を聞いたことがあって。何かよくわからないものを信じて、それと一緒に仕事をするってどんなんだということがあったと聞きました。 もちろん、当時のコンピュータはいまのAIに比べれば、非常に原始的なものだったと思うのですけど、その後、コンピュータが当たり前のように宇宙開発の中で使われるようになって、宇宙飛行士がその技術と一緒に仕事をするということがあった、そういう歴史を考えると、AIも当然入ってきて、使われるか使われないかではなくて、どういうふうに一緒に働いていくのかということが、今後問われてくるんだろうなと思っています。 ロボットともいろいろ仕事をする機会が増えていると思うのですが、AIと一緒に仕事ができる日、本当にどんな世界なのかなというのをワクワクしながら待っているところですね。 (畑中)生活の部分に……宇宙食はいまはウナギも食べられるそうだが、宇宙に行くと恋しくなる食べ物は? (米田)難しい質問……。 (諏訪)素晴らしい質問ですね……、恋しくなるものって、食べられなくなるものだと思うんですよね。そう考えると、いま宇宙に行って食べられないものって生鮮食品とか、生ものとか、きのうもおいしいお刺身を食べたりしたんですが、お刺身もおそらくまだ宇宙では食べられないと思うので、そういったものが恋しくなってくるんじゃないのかなという気はちょっとしています。 (米田)私は麺類が好きなんですけど、宇宙食でもいまありますが、日本人ならではの(すする仕草をしながら)すするってのはなかなか重力がないとできないことなので、思い切りすすって食べるというのは、恋しくなるんじゃないかなと思いますね。 (畑中)いいシズル感、落語家にもなれるのでは? (2人)(笑)