「シンデレラストーリーの一部になれた」 透明シューズで表彰台のてっぺんに立ったリディア・コー【パリ五輪・女子ゴルフ最終日】
パリ五輪はこれまでに数々の最年少記録を打ち立ててきたリディア・コーの“メダルスラム”達成で幕を閉じた。リオの銀、東京の銅、パリの金でメダルコレクションをコンプリート。トップタイで迎えた最終日は後続に影を踏ませぬ貫禄のゴルフ。ウィニングパットを沈めた瞬間、目頭を押さえ「これは間違いなく人生のピークです」と声を詰まらせた。 金メダリスト、リディア・コーのドライバー正面連続写真(撮影/Blue Sky Photos)
バック9に入ったときには後続を5打リード。13番でダブルボギーを叩き差は縮まったが最後はバーディで有終の美。この日6アンダーをマークしたエスター・ヘンセレイト(ドイツ)に2打差をつけ待望の金メダルに輝いた。 「シンデレラのガラスの靴は透明。表彰台に上がったとき私が履いていたのも透明のシューズ。シンデレラストーリーの一部になったような気がします」と喜びをおとぎ話にたとえたコー。 今週はメダル獲得だけでなく、勝てばLPGAの殿堂入り資格が手に入る重要な戦いだった。それだけに重圧は大きかった。 「皆さんから銀・銅に加えて金メダルもコレクションに加えたら? といわれました。もちろんそうしたかったけれど、言うのは簡単ですが実行するのは難しい。インスタも削除して雑音(コメント)を遮断しました。他の人のいうことに動揺したくなかったから。フランスの素晴らしいファンの前で金を獲れたのは間違いなく私にとって人生のピークです」 リディアコールに包まれた18番ホールでウィニングパットを沈めると涙が溢れた。同伴プレーヤーやキャディと抱き合って喜びを分かち合ったあと、すぐにペンを取り出しボールにサイン。スコラーたちに手渡し、アテストテントに向かう途中も多くのファンにサインを書き続けた。 銅メダルだった東京でも銀メダルの稲見萌寧を心から賞賛し「素晴らしいスポーツマンシップ」といわれた人柄を表すような行動だった。 14歳でプロの試合に世界最年少で優勝して以来、プロでの初優勝、メジャー初優勝&2勝目、それらすべてで最年少記録樹立し、男女を通じてもっとも若い17歳で世界ランク1位の座に就いた。 すでにレジェンドといえる存在だが、この勝利でもう1つ勲章が加わった。最年少(27歳)でのLPG Aゴルフ殿堂入りである。優勝や各賞受賞で与えられるポイントの合計27ポイントが条件だが最後の1ポイントを五輪という最高の場で獲得した。 「あと2勝と迫った昨年はプレッシャーがかかって苦戦しました。でも今季序盤で勝てたことで重圧がなくなった。おそらくオリンピックで勝って達成するのが一番クールな方法。できるとは思っていなかったけれど、それができて信じられない気持ちです」 ニュージーランドに待望の金をもたらした元祖・天才少女。人生のおよそ半分をゴルフ界の第一線で走り続けた彼女はこれからも我々に信じられないような光景を見せてくれに違いない。
川野美佳