お礼・お詫びで始まるメールは読まれない…一流社員が新規客との距離を早く劇的に詰めるための賢い声かけ術
■ファーストコンタクトの後は、敬意を持ちつつもフランクに このような表現を普段から使用すると弊害も生まれます。製薬会社MR向けの営業研修を通して、受講者からメールで質問や相談を受ける機会がありますが、そこで感じることは“とにかく表現が回りくどい”です。多くのMRの受講者が、本題に入る前に「研修に対する丁寧なお礼」「研修を理解できなかったお詫び」「質問させていただく許可」を3~4行にわたって記載してきます。とにかく前置きが長いのです。この部分は完全に不要と感じます。 これはMRに突出した傾向で、私は「巻き道トーク」と呼んでいます。MRのような営業職の仕事は、いかに相手の懐に入って契約を結ぶかが鍵なので、過度に慇懃な「巻き道トーク」は致命的です。特に近年は、DX化によって商談の場もオンラインかつ時短で進めるという企業が増え、より端的に相手との距離を詰めるコミュニケーションが求められています。 私が知る優秀なMRは、医師とのファーストコンタクトでは「御侍史」「御机下」を使いつつも、徐々にくだけた言い回しを用いて相手との壁を崩しています。例えば、宛名で「御侍史」をつけた後に、本文で「先生、こんにちは」と挨拶するのです。この場合は面談など対面での挨拶を経た段階で、「メールでも先生とお呼びしてもよろしいでしょうか」と許可をもらい、自然に少しずつフランクな文体を意識していくのです。 みなさんが、このように医師に対して直接メールや手紙を送る機会はほとんどないと思いますが、通常のメールでのやりとりでも、無意識に過剰な敬語を使ってしまっていることはありませんか。 礼儀を重んじる姿勢は大切ですが、相手と早く距離を縮めたい、親しくなりたいと思って過剰な敬語を使うと、時として無用な壁をつくります。優秀なMRに倣って、敬意を持ちつつもフランクに接することがおすすめです。 ※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年10月4日号)の一部を再編集したものです。 ---------- 柏 惠子(かしわ・けいこ) ピグマリオン代表取締役社長、人材育成コンサルタント、研修講師 明治大学専門職大学院修了(MBA)。専門は経営理念浸透と製薬会社向け営業研修。著書に『突破せよ! 新時代を生き抜くMRの掟』(医薬経済社)、『パーパス浸透の教科書』(マネジメント社)。 ----------
ピグマリオン代表取締役社長、人材育成コンサルタント、研修講師 柏 惠子 構成=佐藤隼秀