自転車に乗り続けると骨がスカスカに!? 嘘か真実か、サイクリングと骨粗しょう症の関係
あくまで極端な話ですが……
自転車は日常的な乗りものでありながら、ウォーキングやランニング、スイミングなどと同じ有酸素運動を自然と行なえることから、一般的に健康にも良い乗りものだと認知されているのではないでしょうか。また、サイクリングは身体に大きな負荷をかけることなく長時間続けることができるので、老若男女問わず取り入れやすい運動です。 【画像】サイクリングの画像を見る(5枚)
体脂肪を燃やし、心肺機能や免疫機能、睡眠の質まで向上させる、何かと健康面で効果のあるサイクリングですが、何事も“やり過ぎ”は逆効果というもの。身体に良いからと続けていると、思わぬところに落とし穴があるようです。“極端な”サイクリストを待ち受ける罠……それは「骨粗しょう症」です。 骨粗しょう症とは、骨の量(骨密度)の減少や、骨の質が低下することで骨がもろくなり、骨折しやすくなる病気のことです。骨は成長期にカルシウムを蓄え、だいたい20歳ごろに骨密度が最大に到達するそうです。それ以降は「骨リモデリング」と呼ばれる骨の新陳代謝を繰り返しながら、40代半ばあたりまで骨密度をキープし、そこから徐々に減っていくという流れを辿ります。 骨リモデリングでは、古い骨を壊して新しい骨を作るという作業を同時に行なうのですが、その際に、壊す量が作る量を上回ってしまうと骨がどんどんスカスカになってしまう現象が起き、骨粗しょう症を発症することになってしまいます。 一般的には加齢や女性ホルモンバランスの乱れ、カルシウム不足などの影響で起こるイメージが大きい骨粗しょう症が、なぜ健康に良いとされるサイクリングと結びつくのでしょうか? じつは、骨リモデリングでは“骨への衝撃”が重要な要素のひとつとなっています。骨の中の「骨細胞」が衝撃を感じると、新しい骨を作る「骨芽細胞」に「骨を作れ~!」と命令するのですが、骨に十分な衝撃がない生活を続けていると、「骨細胞」は逆に「骨作りストップ~!」という命令を出してしまいます。そうすると、破壊と再生のバランスが崩れ、骨がスカスカになってしまうというワケです。 平坦な道を走るサイクリングは、運動量自体は多くても骨への衝撃が少ないため、骨作りを阻害してしまうことで骨粗しょう症を発症しやすくなる、と言われています。 実際、ツールドフランスなどを走る一流の競技選手の骨密度を調べたところ、一般的な数値よりも2割ほど低く、より長く競技を続けているベテラン選手ほどさらに低くなり、高齢者に達すると骨がスカスカになっているというデータもあるそうです。 とはいえ、これはあくまでも1年の9割近くをひたすら自転車に乗り続けているプロの自転車競技選手の話です。通勤・通学や子供の送り迎え、たまの休日に自転車で遠出するくらいでは問題ありません。 むしろ、まったく運動しない人に比べれば骨には良い影響しかないので安心してください。逆に「骨を作るため!」と衝撃を与え続ければ、今度は「疲労骨折」の心配もあります。その点も誤解のないようにしなければいけません。 「酒は百薬の長」という言葉がありますが、これも「適量ならば」という前提であることは誰もが知るところです。何事も“やり過ぎ”は身体に良くないことは間違いないでしょう。
史(ちかし@自転車屋)