伝説のレスラー、ブル中野が「クールなプロレス」で世界に挑む
全日本女子プロレスのダンプ松本とブル中野が結成した「極悪同盟」は、1980年代に一世を風靡した。 モヒカン頭にパンクロッカーのような顔面ペイント、凶器はヌンチャク。高さ4mの金網からダイブして喉元に片脚をたたき落とす極め技「ギロチンドロップ」は伝説だ。 国内外で果たした多大な功績がたたえられ、今年3月、WWE(World Wrestling Entertainment)に日本人女性で初めて殿堂入りした。 そのリビングレジェンドが、2023年9月に米国で「SUKEBAN」を立ち上げて旋風を巻き起こしている。日本選手のみの女子プロレス団体だ。ニューヨークでの旗揚げ戦に続き、マイアミ(23年12月)、ロサンゼルス(24年5月)の興行も成功した。 「現役選手だった時代、私は憎悪、哀愁など喜怒哀楽の感情をすべてリングの上で爆発させて戦っていました。私が戦っていた相手は敵選手ではありません。リングを見守る観客です」 エンタメに目の肥えた米国の観客は、既存の興行の焼き直しでは満足しない。英ロイヤルファミリーやビヨンセの帽子デザインを手がけたスティーブン・ジョーンズ、Apple Watchをデザインしたマーク・ニューソンなど世界第一級のスタッフを揃え、オタク文化とポップアート、忍者、芸者、歌舞伎の要素まで一挙にリングに放りこむ。 秋には大きな国際イベントが控える。世界を席巻するクールなプロレスが日本に逆輸入される日を待ちたい。 ブル中野◎1968年生まれ。本名=青木恵子(旧姓=中野)。97年にケガで引退するまでプロレスラーとして国内外で活躍。プロレス解説者、YouTuber(ぶるちゃんねる)として活動しつつ、2023年9月に新しい女子プロ団体「SUKEBAN」を立ち上げた。
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