「60歳の誕生日に雇用打ち切り」就業規則の変更は無効 控訴審でも原告の女子高教諭ら勝訴
町田市にある私立女子高の女性教諭らが「60歳の誕生日をもって雇用を打ち切られたのは不当」として、再雇用と慰謝料の支払いなどを請求する訴訟で、11月27日、一審判決に続いて教諭らの訴えを認める控訴審判決が出された(東京高裁)。
就業規則が変更され、年度途中で雇用打ち切りに
本件の被告は、東京・町田市にある女子高校「フェリシア高等学校」(旧・鶴川高等学校)を運営する学校法人「明泉学園」(以下「学園」)。 原告は同校に勤務していた、3人の女性教諭だ。 2012年、学園が就業規則を変更して、定年を「60歳の誕生日」と定めた。これにより、2020年の6月・9月・10月、各々の誕生日に定年を迎えたとして、原告らは年度途中で雇用を打ち切られた。 本訴訟は、就業規則の不利益変更による雇用の打ち切りは不当であるとして、労働契約上の地位を確認し、退職とされた日以降の月例賃金や慰謝料の支払いを請求するものである。
高裁でも学園側の主張が退けられる
原告側の訴えを認めた、今年3月27日の一審判決で、東京地裁は以下のように判断した。 1.学園が就業規則を変更して、定年を「満60歳に到達した年度の年度末」から「満60歳の誕生日定年」にしたことは合理性のない不利益な変更であり、無効である。 2.学園は、原告らが「無断で事務室に立ち入る」「朝の挨拶活動を行う」「理事長の家を来訪する」などの行為をしたことは「再雇用拒否事由」にあたる、と主張している。しかし、これらの行為が再雇用拒否事由にあたる客観的・合理的な理由があるとは認められない。 3.学園が就業規則を変更して、定年後に再雇用された教員の地位を「常勤講師」から「非常勤講師」に変更したことなどは、「就業規則の不利益変更は無効である」と定めた労働契約上の規定を類推適用して無効となり、原告らの定年後にも常勤講師としての契約は成立する。 4.原告らに対する再雇用拒否は不当労働行為に該当するため、原告らには慰謝料請求権がある。 学園側は控訴を行い、一審では再雇用拒否事由として認められなかった「訓告処分の有効性」を控訴審で改めて主張したが、高裁にも退けられ、控訴棄却となった。 また、再雇用契約の成立について、高裁は「高年齢者雇用安定法の継続雇用制度に関する趣旨を援用して、労働者の再雇用の申し込みに対する再雇用拒否が違法である場合は、『申し込みを承諾したもの』と見なすべきである」との判断を行った。 原告代理人の志田なや子弁護士は「再雇用契約の成立についてかなり踏み込んだ、明確な判断である」と評価した。
「生徒たちに『戻ってきた』と伝えたい」
判決後に行われた記者会見では、原告らのうち三木ひろ子さんと村田智美さんの2名が参加し、所感を語った。 「この判決が出たことをうれしく思う。学園側には、真摯(しんし)に受け止めてほしい。 職場に復帰して、生徒たちに『戻ってきた』と伝えたい。そのための大きな力を得たと感じる判決だ」(三木さん) 「定年とされる2020年の誕生日の1年前には『継続雇用を希望する』と提出していた。しかし、学園から回答が来たのは、誕生日の1か月前だった。 誕生日定年の問題には依然から取り組んでおり、すでに、かなりの時間をかけている。早く現場に戻って、魅力あるフェリシアの生徒たちと共に学びたい」(村田さん)
弁護士JP編集部