過去に仕事場で露骨に悪口を言われ、反論できなかった自分に怒りがこみ上げると話す46歳女性に、鴻上尚史が贈った「反論の場数を踏む方法」の真意とは
「場数」は、舞台発表なら素敵ですが、こういうネガティブな場合は、あまり数をこなしたくないですね。ですから、「集中」と「想像力」を使います。目の前に「嫌な相手」をちゃんとイメージして、いじわるなことを言われた時を思い出すのです。(信頼できる人に、具体的に言われたことを繰り返してもらうのもいいですね) ちゃんと想像できれば、それは「場数」になります。 また、将来、攻撃の対象になることがあっても、「場数を経験させてもらっている」と考えて、復習を欠かさないようにするのがいいと思います。落ち込むのではなく、悲しむのでもなく、傷つくのでもなく、「復習」です。「復讐」じゃないですよ。家に帰って、もう一度、目の前に嫌な人を想定して、言い返すのです。片手間ではなくてね。ちゃんと集中して、何度も繰り返すのです。 そうすれば、少しずつ、感情のたかぶりや体の拒否反応は減っていくと思います。どんなに上がり症の俳優も、練習と場数で、ゆっくりと緊張や混乱から解放されていくものです。 また、たしかに、さららさんが書くように、「相手への反撃は瞬発力」ですが、だんだん落ち着いてきても、すぐに獲得するのは難しいでしょう。ただ、「瞬発力のごまかし」はできます。 ひどいことを言われた瞬間に、「ちょっと何言ってるのか分かりません」とか「もう一回言ってくれませんか?」とか「それは、本気で言ってますか?」「どうしてそんなひどいことが言えるんですか?」なんて言葉で、こっちが少しでも落ち着き、考える時間を稼ぐ方法です。(特に、「もう一回言ってくれませんか?」は有効です。相手が意地悪なことやひどいことを言ったときは、もう一回言わせることで相手自身に自分の発言を突き付ける効果があります。また、相手が感情のあまり言った場合は、「もう一回いう」ことは、難しくなります。冷静にひどいことをいうのは相手自身にとってハードルが高くなるのです。ついでに言うと、NHKの朝の連続テレビ小説「虎に翼」に感動した僕が使いたいのは「はて?」です) よく、難しい質問をされた先生が「いい質問ですね。よくそこに気づきました。じゃあ、一緒に考えてみましょう」なんて言って、時間を稼ぐ方法ですね。間違いなく、先生は、「どうしよう。考えないと。まずいぞ。落ち着け、私」なんて思っているはずです(笑) さららさん。どうですか。こうやって少しずつ、落ち着いていけば、やがて、「他人が困っているから意見を言う」状態に、一歩ずつ近づいていけるんじゃないかと思います。 少しずつ、ゆっくり、焦らず、諦めず。時間をかければ、きっと変わっていけると思います。 【鴻上さんへの相談、募集中!】あらゆる人間関係、組織のなかで、相談者の身に起きている困ったこと、身動きのとれない境遇、逃げ出したい状況など、すべての悩める事態に鴻上尚史さんが答えます。ぜひ、あなたの悩みをこちらからご投稿ください。※投稿に当たっては、注意事項を必ずお読みください。
鴻上尚史
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