被害拡大する「紅麹サプリメント」は“薬害”の可能性も!? 機能性食品学の専門家が「真犯人説」指摘
死者5人、入院者数は延べ196人(4日時点、厚労省発表)になるなど、関連が疑われる被害者数が増え続ける小林製薬の紅麴サプリメント被害。因果関係はいまだ不明だが、効能効果をパッケージに記載できる「機能性表示食品」がサプリメント市場を底上げ。完全とはいえない制度のままで利用者が増大し、結果的に被害を大きくしたとの見方もある。メーカーで医薬品の薬理安全性や機能性食品研究に従事した経験もあり、機能性食品学を専門分野とする芝浦工大・越阪部奈緒美教授に、制度の問題点や制度を活用した健康食品のリスクなどについて聞いた。 食品と薬品には明確なラインがある
機能性が表示された「食品」として流通
これまでに多くの被害が報告されている小林製薬の紅麹サプリメント。被害との因果関係の解明が急がれるなか、「プベルル酸」原因説なども浮上しているが、越阪部教授は同社の”紅麹サプリメント”そのものに着目している。 「紅麹(ベニコウジ)は、厚労省の食薬区分では医薬品的効能効果を標榜しない限り、食品としての扱いになっています。ですから紅麹色素は食品と扱われます。ところが機能性表示食品である紅麹サプリの機能成分は『米紅麹ポリケチド』(モナコリンKなど)です。小林製薬のHPでは、モナコリンKは米国で承認されている高コレステロール血症治療薬ロバスタチンと同じ物質であることを認めています。加えて、同サプリの摂取目安量は2mg/日とされていますが、同薬の臨床用量2.5mg/日と極めて近いんです。医薬品的効果効能こそ標榜していませんが、これらのことから”医薬品原料”を製造するという意思のもとに商品設計されていると疑われても仕方がないでしょう」 より効果の期待できるサプリメントを小林製薬が製造しようとしたと捉えれば、聞こえはいいかもしれない。だが、機能性が表示された「食品」として流通する商品が、実は医薬品レベルの成分に近い薬理成分を有するとすればなにが起こるのか…。 「ロバスタチンの添付文書(医師向けの使用上の注意)には、特に20mg投与時においては腎機能に影響があらわれる恐れがあるため、月一回の検査が必要であると記載されています。一方、紅麹サプリメントの裏面表示には“筋肉痛・脱力感・尿の色が濃いなどの症状が出た場合は(すなわち腎障害が起きたら)、ご使用を中止し、医師にご相談ください”とあります。このことからも、当該製品を摂取すると腎障害が起こることはある程度予測されていたのではないかと思います。特に今回亡くなられた方はいずれも70歳以上ということですから、加齢で腎機能が弱まっていた可能性は極めて高いと推察されます。そうした高齢者が”食品”だからと、安心して摂取し被害に遭った。そうだとすれば、ある意味で今回の事件は”薬害”ともいえるのかもしれません」(越阪部教授)