「紅麹」死亡相談76人の小林製薬、独断で健康被害の報告対象絞り込み 情報抱え込む姿勢
小林製薬が製造・販売した「紅麹(べにこうじ)」成分のサプリメントを摂取した人の健康被害問題で、死亡についての相談が新たに76人に上ることが分かった。同社はこれまで「腎疾患以外と診断されているものは報告対象外」と独自に判断して数を絞り込み、国には「5人」と報告していた。情報を抱え込んで公開しない悪癖がまたも露呈し、危機管理への姿勢がさらに厳しく問われそうだ。 【表でみる】「紅麹問題」で浮かぶ小林製薬の対応の問題点と教訓 同社が死者数を「5人」と発表したのは3月29日。その後、厚生労働省への新たな報告はなかった。 「『5人』という数字がずっと続いているが、変化はないか」 不審を感じた厚労省食品監視安全課の担当者が今月13日、同社に問い合わせたところ、「変わりない」との回答だった。ところが翌日、同社から「ほかに調査中の事例がある」と一報があり、27日朝になって「76人」との報告があったという。 同社は28日、厚労省への報告後の発表で「これまでは腎疾患と診断された事例のみを報告対象としていた」と釈明。これに対して、厚労省は取材に「特段の範囲を設けていたわけではないが、法令上、医師の診断で健康被害が疑われる事例はすべて報告することになっている」と話した。 報告すべき人数を報告していなかった同社に対し、武見敬三厚労相は「調査は小林製薬に任せておけない」と怒りをあらわにした。 ところが、同社は報告漏れの落ち度を認めていない。発表では「被害発生状況の把握方法の変更」を表明し、「腎疾患に焦点を当てて(摂取と被害の)関連性を判定していたことが、必ずしも実態を正確に把握するものではないことを認識した」と説明した。 理由として「入院や死亡の原因が腎疾患でなくても、高齢者や基礎疾患のある患者で摂取の間接的な影響があった可能性もある」とした。報告対象を独断で腎疾患の患者に絞っていたことについての言及はしていない。 同社は1月中旬に医師から最初の被害情報が寄せられて2カ月以上にわたり、国など行政に報告していなかった。健康にかかわる情報を一刻も早く公表する必要性をいまだに理解していない疑いが濃厚となったことで、信頼回復はさらに遠のいたといえる。(牛島要平)