子ども医療費の窓口負担、ゼロにしたらコンビニ受診が増えないか…課税世帯・未就学児への現物給付を全国で唯一採用していない鹿児島県、財政負担の増加を懸念
鹿児島県知事選で争点の一つが「子ども医療費助成」だ。住民税非課税世帯の高校生までを対象に「現物給付方式」を採る県は、2025年度以降をめどに課税世帯の未就学児にも広げる方針を示す。月額3000円までの負担で県内全域の医療機関で利用できる計画。県内の子育て世代からは、評価しつつ「自己負担額の根拠は」「対象を広げて」などの声が聞かれる。 鹿児島市で5歳と1歳を育てる打越麗奈さん(35)は「後日戻ってくるとはいえ、家族でコロナに感染した時や急きょ入院が決まった時など、額が大きいと窓口で払うのは大変だった」と振り返る。県の方針を歓迎する一方、「自己負担を3000円までと設定した理由が知りたい」と疑問も。4歳と0歳の母親(28)=同市=は「1回の負担額は少なくても、かさむと大変。週1回の通院が2カ月続いたこともある。高校生まで無償化になれば」と話す。 課税世帯の未就学児に現物給付方式を採用していないのは、全国で鹿児島県だけ。県子育て支援課によると、導入で年間約9000万円の追加財源が必要になる。対象を中学生まで広げると1年で約7億3000万円かかり、自己負担ゼロなら約21億円と試算。さらなる拡大には慎重だ。
担当者は「窓口支払いがなくなると病院に行きやすくなり、むやみなコンビニ受診が増える懸念がある。医療費は1割程度膨らむと予測され、県の財政負担は大きい」と説明する。 市町独自で窓口支払いをなくす動きも出ている。垂水市は今年4月から県内で初めて高校生まで現物給付方式を取り入れた。市内の病院や薬局など29カ所を対象に、窓口支払い分を医療機関が市に申請する。 担当課によると、4月分は約570件で90万円ほど。医療機関からむやみな受診が増えたとの相談はなく、市の担当者は「今のところ必要な人が利用できているのでは」と語る。 同市で中学1年、小学3年、1歳の3人を育てる金子宏美さん(42)は「会計がなく、診療後すぐに帰れるので幼い子を連れて行く負担が減った。急病でも、お金の心配をせずに行けるようになった」と喜ぶ。ただ1歳の子のかかりつけ医は隣の鹿屋市。「下の子の方が病院に行く頻度が高い。市外の医療機関にも広がれば」と願う。
子育て支援への県の姿勢を問う声も。鹿児島市内で3歳の子どもを育てる40代女性は「他県に比べて遅れていることが気になる。子ども政策にもっと力を入れて」と話した。 【メモ】 鹿児島県の子ども医療費助成は「自動償還払い方式」と「現物給付方式」を採用する。住民税課税世帯は、いったん窓口で全額を支払い、後日返金される「自動償還払い方式」。戻ってくるのは市町村が決めた月額0~3000円の自己負担分を超えた金額で、対象年齢も自治体で異なる。非課税世帯の高校生までが対象の「現物給付方式」は窓口支払いは必要ない。
南日本新聞 | 鹿児島
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