中国映画『夏が来て、冬が往く』12月公開 是枝裕和、池松壮亮、石井裕也らのコメントも
中国映画『夏が来て、冬が往く』が、12月27日より新宿武蔵野館ほかにて全国順次公開されることが決定した。 【写真】『夏が来て、冬が往く』場面写真(複数あり) 本作は、中国の美しい海辺の町を舞台に、家の都合で養子に出された三女の心の軌跡と家族愛を描いた人間ドラマ。日本大学芸術学部で映画製作を学んだ経験を持ち、第36回東京国際映画祭の提携企画、2023東京・中国映画週間にて新鋭監督賞を受賞し、本作が長編デビュー作となった彭偉(ポン・ウェイ)が監督を務めた。いくつかの実話から発想を得て制作され、中国山東半島南部にあり風光明媚な街で知られる青島で撮影が行われた。またポン監督は、東京国際映画祭2023の提携企画「2023 東京・中国映画週間」にて新鋭監督賞も受賞している。 広東市に住むジャーニーは、結婚を機に家を購入するかどうかで恋人・ジーユエンと意見が合わず、彼からのプロポーズの返事を先延ばしにしていた。ある電話をきっかけに、ジャーニーは生家の家族と連絡が取れ、実父の葬儀へ参列することになる。初めて会う母、初めて会う二人の姉と弟。長女のウェンフォンは生家で過ごしてきたが、次女のシャオリーもまた養子に出されていたことを知る。三姉妹は互いの心を癒しながら日々を過ごす。時折、ジャーニーは幼い頃の養父とのささやかな時間を思い出し、家族や家のことを改めて考え始めるが、母が自分を探したのは、別の目的があったことを知る。 あわせて、日本版ポスタービジュアルと場面写真も公開。ポスタービジュアルでは、「人生の悲しみ。家族の喜び。時の流れが未来へとつなぐ」というキャッチコピーとともにメインキャストの姿が捉えられており、場面写真では、三姉妹の個性豊かな表情などが確認できる。 また、是枝裕和、滝田洋二郎、池松壮亮、栗原小巻ら著名人からの応援コメントも到着した。 コメント 是枝裕和(映画監督) 作品はとても面白く拝見しました。 中国のお葬式にまつわる風習も大変興味深かったです。 長編一作目としては脚本も良く練られています。 池松壮亮(俳優) 一人ひとりの人間の心に癒しがたい傷を残してきた文化と、 忘れられない痛みをそっと鎮めてくれた風習や営みが対照的に映し出される。 現代中国に生きる女性の再会を描き、季節が移ろうように自然の流れに委ねながら、 この映画は彼女たちの再生を促すのではなく、静かに温かく寄り添う。 滝田洋二郎(映画監督) 映画を観て初めて知る事は多い。「中国は一人っ子政策」なのに、実際には様々な「例外規定」が存在し、当然そこには想像もつかないドラマがある。 亡くなった実父の葬儀の為、残された母の元に四人の兄弟姉妹が集う。 生まれて直ぐに里子に出された三女の長年にわたる蟠りが解れてゆき、新しい自分と家族を見つけてゆく過程が、美しい生まれ故郷の光に包まれて優しく丁寧に描かれる。 彭偉監督のテーマ“人生はいつも残念の中で円満を味わう”をしっかりと味わった。心地好い映画でした。 栗原小巻(女優) 美しい、微かなひずみが映画芸術になりました。 本木克英(映画監督) 幼時に養子に出された女性が、実父の葬儀に訪れた生家での三日間に、過ぎ去った歳月すべてが 凝縮されていて、切なく胸に迫る。 『海街diary』を彷彿する美しい世界観のなかで、厳しい人生の選択を見つめる監督の視点は、 あくまで穏やかで優しい。 青木崇高(俳優) ゆったりと時が過ぎる美しい町に目を凝らすと、そこに染み込んだ文化、風習、 そしてある家族の複雑な繋がりを観た。 渡辺祥子(映画評論家) 幼くして養子に出された三女が実の父の葬儀で母と姉たち、年下の長男がいる家を訪れた三日間。 そこにある大学卒の三女や、いまの日本の私たち女性には許せない男尊女卑の世界を背景に、境遇の違う 世界に生きる三姉妹に生まれる肉親の血つながりの温かみが胸にしみる。長男のこと、母の抱える痛み。 でもこれからはきっと今までとは違う明日が来る、という思いが心に残った。 大原櫻子(俳優、歌手) 「男尊女卑」と言う差別思想によって、女性が社会で生きる難しさを痛切に描いた作品。 現在においてもどの国にも蔓延る問題だと改めて感じました。 そんな世の中で強く歩んでいく三人姉妹。 男性社会に揉まれ我慢やプレッシャーを感じる日々でも、生きるため食べるため子供のために 懸命に生きていく姿が繊細に描かれており、女性の強さを感じました。 大人になり初めて会う姉妹。 育った環境は違えど、そこには姉妹愛があり、その愛情が垣間見えるシーンがいくつかあります。 私にも姉がいるので、姉妹ならではの愛情を感じるシーンにグッと心を掴まれました。 石井裕也(映画監督) 知らないことばかりでした。 風習や家族は人を愛情深く包み込むが、時に冷たく突き放すこともある。 人生は選択できることとできないことがある。 実に重いテーマを扱っていますが、青島の風景と女性俳優たちの好演が映画を 美しいものにしていると思います。 小林さゆり(フリーランスライター、翻訳者) 複雑な生い立ちを持つ佳妮(ジャーニー)が、実父の葬儀に参列するため生家に戻る。 赤レンガの美しい海辺の街並み、老いた実母と姉弟たちとの雪解けともいえる心の交流、 そしてこの土地に伝わる驚くべき豊かな風習……。 かつての農村部に多く見られた男尊女卑や養子のならわしという重いテーマを扱いながらも、 その範疇にとどまらない魅力的な映画であり、中国の知られざる一面を描き出した意欲作。 終盤に挟み込まれた珠玉のシーンに魂が揺さぶられる。 内田慈(俳優) 家族の話であり、生物学上"女"に生まれてしまった人たちの葛藤の話である。 作中映る街が美しくて、中国のとある地域での独特の伝統やしきたりが面白い。 でも、全く別の土地や文化の中で生きてきたはず中国の現代女性たちの悩みが、 日本で生まれ昭和・平成・令和を生きてきた一女性である私と想いが繋がって、抱きしめたかった。 「家族って、好きとか嫌いとかそういう問題じゃない」と核心をついてくれるような、 この作品の温度感が、大好きだ。 船越英一郎(俳優) 名もない家族のささやかな物語から、今の中国が抱える数多の課題が 詳らかになる。 緻密に構築された脚本と演出、人生の機微を繊細に演じ切った俳優陣に脱帽! 静かにゆっくりと心が揺さぶられ、また人間が愛おしくなる。
リアルサウンド編集部