「世田谷の家はあなたに相続させる、って書いたわよ」70代母に遺言書を託された、3きょうだいの中間子だったが…母の四十九日、まさかの〈どんでん返し〉に絶句
母親の急死→四十九日に起こったまさかの事態
しかし、突然の不幸が襲います。入院からしばらくたち、そろそろリハビリを…というタイミングになったとき、なんと鈴木さんの母親は風邪をこじらせ、あっさり亡くなってしまったのです。 「どうしてこんなことに…」 葬儀はしめやかに終わり、その後、母親の四十九日の法要を行うことになりました。鈴木さんは、兄と妹にあずかった遺言書の話をしなければと思い、なんとも落ち着かない思いでいました。 そして、法要の後の食事の席で、話を切り出すタイミングをうかがう鈴木さん。 「実は、お袋から遺言書を預かっているんだ」 「えっ!?」 突然話を切り出したのは、鈴木さんの兄でした。驚いたのは、鈴木さんです。 「その、じつは…」 「私も遺言書を預かっているわ!」 「えっ!?」 なんと、妹まで…。鈴木さんの母親は、子ども1人ひとりに遺言書を託していたのです。
3通出てきた遺言書。有効なのは…
後日、鈴木さんのきょうだいは、法律家のアドバイスに従い、遺言書を家庭裁判所に提出して「検認」を請求しました。 「検認」とは、相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。 検認の結果、いちばん日付が古い遺言書は長男のもので、父親が亡くなって半年後の日付でした。 「自宅は長男に相続させる。貯金は3人で平等に分けること」 その次に古いのは、鈴木さんのもので、1年前のものでした。 「自宅は二男に相続させる。貯金は3人で平等に分けること」 そして、いちばん新しい遺言書は、末っ子の妹のもので、半年前のものでした。 遺言書が複数発見された場合、有効となるのは、最も新しい遺言です。 ここまでの展開を聞いていた妹は、満面の笑みを浮かべていました。 「財産は3人で平等に分けること」 「……えっ!」 妹に託されていた遺言書には、付言事項といって、故人の思いが記されていました。 「具合の悪いお母さんを、みんな親身に世話してくれてありがとう。きょうだい仲よく暮らしてください」 「おふくろも、思うところがあったんだろうな」 「そうだね」 母親の思いを、きょうだい3人静かに受け止めることになりました。 [参考資料] 法テラス 「遺言が数通発見された場合には、どの遺言が有効ですか。」 裁判所 「遺言書の検認」
THE GOLD ONLINE編集部