小中9年間“ずっと不登校”なのに東京藝大に合格…「東大でも良かった」 15歳の少年がゼロから作曲家を志した原動力とは
作曲家になろう
この再現性は勉強だけではありません。「作曲も、ピアノも、藝大合格のために必要な勉強を、合格者と同じ方法で正しくやっていけば再現できるはず……!」。15歳になって大学に行くと決めた時に、東大と同じく真っ先に頭に浮かんだのは、藝大でした。東大と藝大。このふたつの大学で悩み始めることになります。 「東大を受けてもいい。でも自分が本当に将来やりたいことはなんだろう」 というのも、大学受験の動機は“革命”を起こすためだったので、具体的にやりたいことまでは考えていなかったのです。そして、そのままだと動機としては弱過ぎると感じていました。そこから、自分の興味のあることについて考え続ける日々が始まりました。 でも、パッと答えは出ません。数か月の間ぐるぐると悩み続ける中、ある日、ふとした時に、坂本龍一さんの「Merry Christmas Mr. Lawrence」を耳にしたのです。 それまでにもこの曲は何回か聴いたことはありましたが、切ない雰囲気の美しい曲だなと思う以外、特に感想を抱いたことはありませんでした。でも、この時の自分には、それがまったく違うように感じられました。聴いている少しの間だけは不安を忘れられるような、“居場所”にいるような感覚になったのです。 「こんな風に音楽が作れるなら、自分もやってみたい」「それなら、徹底的に勉強するために藝大に行こう」 初めて、自分の「好き」を深く認識した瞬間でした。ただ、私はこの時点でまだ、きちんと音楽を学んだことはありませんでした。バイオリンやギターなど、あくまでも趣味、遊びや興味の対象としては習ったり触ったりした経験はありましたが、入試対策として“本気”で学習したことはありません。 藝大音楽学部の入試では、ほとんどの専攻でピアノの演奏が必須課題になっています。私が目指そうと考えた作曲科も例外ではないどころか、むしろほかの専攻よりも高い水準を求められます。でも、ピアノを習ったことは一度もなく、すべてゼロからのスタート。 「高校行くよ」にも驚いていた両親は、「音楽をやりたい」「藝大に行く」「作曲家になりたい」と急に言い出したことにも、とても驚いていました。