昭和10年女子は本当に「ビールを飲んでいた」のか…朝ドラ『虎に翼』の根幹につながる「違和感」
ちょっと考えられないシーン
朝ドラ『虎に翼』は、いまよりもはるかに女性の社会的地位が低かった時代に、弁護士をめざした女性・寅子(ともこ)の物語である。 【一覧】テレビ局「本当は使いたくないタレント」…ワースト1位は意外な大御所…! 第16話、ヒロイン寅子が大学の本科に進んだのをお祝いして、家で祝杯を挙げていた。 寅子の母もビールを飲んで少し酔っているようだった。 はて。 昭和10年に、男たちと同じように女性が酔うほどビールを飲むだろうか。 はて。はて。 私の昭和の記憶から想像するに、ちょっと考えられないシーンである。 もちろん、この家が他家とは違って、異質な家族だったというのなら、そういうこともあり得るだろう。そんな家が日本には一軒もなかったとは証明できない。 でも、そんな描写はなかった。 寅子の母は、できれば他家と同じよう、娘が外で恥をかかぬよう、きちんと嫁にいけるよう、必死で育てている、というふうに描かれていた。 不満と不平を抱きながらも、我慢したほうがいいからまわりに倣うという姿勢を貫いている。 ある程度のレベルの家であり、家長の父もおり、跡継ぎの長男もいるという酒席で、うちうちの集まりとはいえ、女性が男と同等に酒を飲んでいる昭和10年、というのは私にはどうやっても想像できない。 このドラマのテーマの根幹にもつながっているところだ。 意味もなく不当に女性は差別される。そこが繰り返し描かれているドラマだ。 その最たるものが「酒席」のはずだが、はて、とおもってしまう。 酒席こそ、女性が差別されている一番象徴的な空間ではなかったか。
あったはずの「痛烈な差別意識」が描かれていない
内々の空間であっても、きちんと区別されていたからこそ、女性差別の根の深さがわかりやすく表れる場所ではないのか。 親戚のあつまりや、町内や村での行事で人が集まるとき、酒席にいるのは男ばかり、女は台所にかたまって用意と後片付けをする。もちろんときに勝手に酒を飲み合うこともあるだろう。でもあくまで女だけの秘め事のようなもので、おおっぴらにしているわけではない。それがお馴染みの風景である。 祝いの席に女性が同席することもあるだろうが、男と同じように酒を飲むというのは考えにくい。 もちろん、女性もちょっと飲む、というのはあるが、「女性には女性の嗜みがあり、男の人のように飲むものではありません」という強い空気があった。 ひどいはなしだが、酔っていいのは男だけであって、女は酔うほどに飲むものではない、という圧があったとおもう。ひどいはなしだ。 「酔っていいのは男だけ」。 たしかにそんな空気があった。言葉にしていないが、多くの男性はそう考えていたはずだ。いま書いていて痛烈に納得している。 女が酔ったら危ないから、という後付けの説明はされていたが、そこに本質はないだろう。これは男の楽しみだから女は入るな、(酒席用の女性だけ酔えばいい)という痛烈な差別意識があったはずだ。 ひどい話だ。でも事実である。