再戦で真の決着へ。勝者は生まれたが強者は判明しなかった伊調vs川井の金メダル対決
レスリングの東京五輪代表は、まず五輪出場資格を得られる2019年世界選手権の代表選考から始まっている。今回の天皇杯全日本選手権は、来年の世界選手権代表選考会の初戦だ。その後、初夏に行われる明治杯全日本選抜レスリング選手権大会が二度目の代表選考と位置づけられている。両大会の優勝者が同じ場合はその選手が日本代表に、異なる場合は、二大会の優勝者同士がプレーオフ戦を行い、その勝者が代表となる。 五輪出場資格は、世界選手権ののち、2020年の大陸予選と世界予選がある。しかし、これまでの日本女子の成績を考えると、女子の軽量~中量級は、最初の資格獲得大会である世界選手権で出場資格を手に入れる可能性が高い。そして、その世界選手権で優勝した選手は、直近三大会ではそのまま五輪代表となっている。 五輪金メダリスト同士による試合は、世界選手権では実現することがある。2018年世界選手権でもフリースタイル97kg級で、ともにリオデジャネイロ五輪金のサドゥラエフ(ロシア)とスナイダー(米国)による決勝戦が実現している。サドゥラエフが片足タックルからフォールに持ち込み、前年の世界選手権で押され負けしたリベンジを果たした。一年前は力強さで上回ったスナイダーを、一年かけてサドゥラエフが追い越した。この試合を見た誰もが、いま強いのはサドゥラエフなのだと受け取ったはずだ。これで二人は一勝一敗。どちらが強いかという判断は、次の試合結果によってまた変わるだろう。 前述の金メダリストたちのように、川井と伊調は、どちらが強いのか試合で勝負がついたのか。確かに試合結果は川井が勝利した。だが、本当に強いのはどちらなのかという決着はつかなかった。点数は入っているが、お互いに自分が攻撃したことによる得点は無かったため、判断しづらいからだ。決勝戦での対戦が念頭にあったからだろうか、持っている技術や展開の引き出しを見せない前提での試合だったように受け取れた。今後、二人による代表争いが続いてゆくことを考えると、大会最終日の決勝戦も、積極的にリスクに挑戦し合う試合には、ならないかもしれない。そうなると、一体どちらが強いのかという判断は、次の機会に持ち越しとなる。 代表争い第一幕は、どんな結末を迎えるのか。そして次は、どんな幕開けが待っているのか。おそらく世界一、過酷な代表争いになるだろう。 (文責・横森綾/フリーライター)