爆笑問題が語る『爆チュー問題』への特別な思い 「我々は嫌われ者だけど“爆チュー問題”のときは好かれてる」
現在、FODにて配信されている「爆チュー問題」の25周年記念特別番組「爆チュー問題 25チュー年 おめでとう&ありがとうスペシャル」。同番組は、天才ねずみ“おおたぴかり”と普通のねずみ“たなチュー”が、人間の世界から拾ってきたモノや分からない言葉について、デタラメな解釈をしたり、ねずみの仲間たちと大暴れしたりするコント番組。1999年「ポンキッキーズ」から生まれ、2024年で25周年を迎えた。 【写真】穴からこちらを笑顔で見てくる可愛い爆チュー問題(おおたぴかり&たなチュー) 「25周年をいろんな人に祝ってほしい!」と願うぴかりとたなチューのもとへ、明石家さんまねずみ師匠(明石家さんま)、ナインチュナイン(ナインティナイン)、ハライチュ(ハライチ)、ウエチュトランド(ウエストランド)、シティホテル3号しチュ(シティホテル3号室)、ガチャピン・ムック、菊池桃チュー(菊池桃子)とスペシャルゲストたちが次々とお祝いにやって来て、歌あり笑いありで盛り上がる。 そんな記念すべきタイミングで、爆チュー問題(爆笑問題)のおおたぴかり(太田光)とたなチュー(田中裕二)に25周年を迎えた今の気持ちや「爆チュー問題」に対する思いをたっぷりと語ってもらった。 ■「あんまり25周年っていうことに気付いてなかった」 ーーまずは「爆チュー問題」25周年記念特別番組の制作が決まったときの率直な感想を教えてください。 たなチュー:あんまり25周年っていうことに気付いてなかったっていうか…。 ぴかり:そうだよね、言われて初めて気付いたね。 たなチュー:25年続いてたってこともすごいですし、スタッフもそんなに変わってないし、セットもそのままだしね。だから、「そんなに経ってるんだ…」って驚きがありました。特番でやらせていただけるだけでなく、ゲストとしてさんまさんやナイナイとかにも出ていただけるっていうのはびっくりしたのと同時にすごくうれしかったですね。 ぴかり:「爆チュー問題」は我々の番組の中で一番長くやってて、愛着があるというか。ここまで紆余曲折いろいろあって、最近じゃ、「『爆チュー問題』よく観てました!」って言ってもらえるんだけど、「あれまだやってんだよ」って言うと「…え?やってるんですか…?」って結構驚かれるから。 あぁ、もうフジテレビにとって「爆チュー問題」は端っこに追いやられてるのかなぁ…と思ってた部分もあったので、こうやって“25チュー年”って大々的にやってもらえるのは本当にうれしいです。聞いたときは、長く続けてて良かったなぁ~って思ったね。 ■「お前が岡村だったらなぁ~。もっと売れてるよ」 ーー今回は25チュー年をお祝いするビッグゲストとしてさんまねずみ師匠とナインチュナインが出演するとのことですが…。 ぴかり:ナイナイとは今日撮りました。なかなかね、こうやってサシでやる機会はないから、面白かったよね。 たなチュー:うん。 ぴかり:ナイナイよりも我々の方が2~3年くらい先輩なんだけど、デビュー当時はかたや天素(吉本印天然素材)でワーッていって、俺らは沈んでたときだったから、もうバチバチで。「ナイナイこの野郎!」とか言ってたんだけど。そっからはお互い30年以上ずーっとやってる中で共演もしてるから、会えば話すしで親しくはなったんだけど、こうやって4人だけで何かをやる、しかもコントっていう設定の中でっていうのは、初めてだったんでね。なんか感慨深いよね。 たなチュー:そうですね。今でもフジテレビの「ENGEIグランドスラム」とかお正月の「爆笑ヒットパレード」(フジテレビ系)とかで会う機会はあるんだけど、ナイナイは司会で我々は漫才だけして…って感じだから、ほとんど絡むこともないからね。すごく新鮮でした。 ぴかり:収録はほぼフリートークに近いから、昔話とかいっぱいしましたよ。その中であのときはどうだったとか。でもね、よく考えたら最初に会ったときって覚えてないねっていう。 たなチュー:うん。30年ぐらい前になるんだろうけどね。 ぴかり:「初めどこで会って話したんでしたっけね?」「いつだったっけね?」みたいな。不思議だよね。 たなチュー:4人とも思い出せない…。 ーー初めて観たナインティナインのネタも覚えてないのでしょうか? たなチュー:ナイナイはすぐに売れちゃってネタをやらなくなっちゃったけど、最初の頃って、岡村(隆史)が宇宙人だっけな?そんな設定のネタがあって。それがすごく面白かったんだよね。ぴかりが「岡村、こいつすごい…。このナイナイのチビは上手いし、動きもすごいし、運動神経もいいし…」ってすごく言ってたことは覚えてる。 ぴかり:「お前が岡村だったらなぁ~。もっと売れてるよ」って。 たなチュー:よく言われましたね(笑)。 ■明石家さんまねずみ師匠とのコントは「夢が叶った」 ーーさんまねずみ師匠との収録はまだとのことで、「JUNK 爆笑問題カーボーイ」(TBSラジオ)では制作陣があまりの大御所に「台本を渡していいのか」「ガチャムク(ガチャピン・ムック)と共演はOKなのか」といろいろ悩んでいましたが…。 たなチュー:(台本)渡せた? スタッフ:渡しましたが、大きな流れをお伝えしたら、(さんまねずみ師匠)「分かった分かった」。「さんまねずみ師匠のお名前も大丈夫ですか?」(さんまねずみ師匠)「OK!OK!」。「ガチャピン・ムックも出ます」(さんまねずみ師匠)「分かった!」っていう感じでした。 ぴかり:そりゃ大丈夫だろ(笑)! たなチュー:言ったじゃん!ガチャピン・ムックが共演NGのはずないんだよ(笑)。 ーー(笑)。ちなみにさんまねずみ師匠とはどんな企画を用意しているのでしょうか? ぴかり:もうどうなるか分からない。 たなチュー:一応設定はあるんですけど、コントって言ってもセリフがきっちり決まってるっていうよりも流れ的なやつなので、本当に僕らも未知数で。 ぴかり:いやぁ~楽しみだね! たなチュー:ね。(明石家)さんまさんどういう感じでやられるか…。もうだから、さんまさん次第なんで! ぴかり:我々ね、「オレたちひょうきん族」(1981~1989年、フジテレビ系)世代なんでね。(ビート)たけしさんとさんまさんがコントしてるところを観て、ああいうことをやりたいっていう風に思って始めたから。さんまさんとトークで絡むことはあっても、こうやってコントでっていうのはほぼ初めてだよね?「明石家マンション物語」(フジテレビ系)で一回、今田(耕司)もいてコントっぽい設定でやったことはあったけど、ほぼないので。夢が叶った感じですね。 ーーそれはとても楽しみですね。他にコントで共演したい方はいますか? ぴかり:たけしさんかなぁ。まぁでも、そういう意味じゃ、とんねるずもそうだし、絡んでみたい人はいっぱいいるよね。 たなチュー:そうねぇ。…まちゃあき(堺正章)! ぴかり:まちゃあきね。…せんだみつお! たなチュー:(笑)。 ■「佐藤雅彦さんはやっぱり天才」 ーー(大喜利になってきたので…)ありがとうございます。子ども番組「ポンキッキーズ」の1コーナーとして誕生した「爆チュー問題」でしたが、25年前の当初、この番組の話を聞いたときはどう思いましたか? ぴかり:俺らが出る前の「ポンキッキーズ」(フジテレビ系)はスチャダラパー・BOSEとか安室(奈美恵)ちゃんが初代MCをやってて、それをケイン・コスギがMCでリニューアルして。その中のワンコーナーに「爆チュー問題」はあったんだけど、最初は「『ポンキッキーズ』で何かやってくれませんか?」って、うちの社長に話がきたんです。 社長が「太田は子ども番組はやらないんじゃないですかね…」って答えたんだけど、俺はもうやりたくてしょうがなかったの。それは昔から「セサミストリート」とか「PEANUTS スヌーピー」とか、子ども番組なんだけど大人が観ても面白いっていうものが好きで。将来やりたいなと思ってたから、即答したんですね。 何をやるかっていう話になったとき、当時「ドリフ大爆笑」(フジテレビ系)でいかりや(長介)さんと仲本(工事)さんがバカ兄弟で、どっちもバカなんだけど、バカがバカにモノを教えるっていう設定のコントをやってて、こんなのやりたいって思ったんですよ。それを言ったら、じゃあどう形にするかっていうので、佐藤雅彦さんに社長が相談したんです。 当時、佐藤さんは「おかあさんといっしょ」(NHK)や「だんご3兄弟」をやってたから、「僕はちょっと今、ライバル番組に携わっているので、できないと思います」ってやんわり断られたんだけど、次の日佐藤さんから電話がかかってきて…「できました」って(笑)。 ーー…え? ぴかり:それで佐藤さんの事務所に行ったらもう全部が決まってて。ぴかりとたなチューっていうネズミで、絵コンテもセットの図もあって、「でたらめな歌」までできてたんです。 ーーすご過ぎませんか? ぴかり:モノを説明するって俺が言ったから、バカっていう設定じゃもうダメじゃないですか。当時ドリフですらバカっていうのにクレームが来てたんです。でもネズミだったら知らなくても必然性がある。要はネズミは小さいから、人間界にあるいろんなモノを拾ってくると、全部が大きくて目新しいモノになると。ほとんどの人間が日常で使ってるものが当たり前ではなくなり、不思議なモノになる。 だから、“でたらめ”をキーワードにして、俺が天才ぴかりで、こいつが普通のたなチューで、俺がこいつに知ったかぶりで教えるっていう。佐藤さんはそういう風に変換して、俺がやりたかったことを全部形にしてくれてたんですよね。すごいですよ。やっぱり天才だなと。 ーーちなみに、ここまでの話はたなチューさんは全く知らなかったのでしょうか? ぴかり:極秘で。 たなチュー:全然知らなくて。急に「ポンキッキーズ」でやることになったからと決定事項を伝えられたんです。子ども番組でやるんだって驚きましたね。それで佐藤さんの事務所に行って、初めて何をやるかを知らされて。面白そうだなと思いましたけど、一日で出来上がったとか、そういうことも僕は全く知らなかったので、後で聞いてびっくりしました。 ーー実際にやってみてどうでしたか?最初の収録のときのことは覚えていますか? たなチュー:ちょうど今日、収録で最初の放送回をVTRで観たんですけど、うっすら覚えてるぐらいで…あんまり覚えてないね。ただ、この番組はとにかくスタジオセットがすごいじゃないですか。美術がすごくいいなって思った印象が強いです。 それまで僕らは自分たちの番組を持ったことがなかったので、もちろん他の方の番組に出たときにすごいセットとかはあったんだけれども、自分たちの番組のためだけにこんなに豪華なスタジオセットを作っていただいたことに単純に感動した記憶があります。しかも、デザインもセンスがあるじゃないですか。 ぴかり:あんなに贅沢なコントセットをね。 ■「お前ミッキーマウスのTシャツ着てるな…」 ーー美術、本当にオシャレで可愛らしいですよね。小学生時代当時リアルタイムで観ていて、ときめいた記憶があります。私は特にでっかい軍手でジャンケンをする回が印象に残っていて、あの現実と非現実がミックスされたような世界観に夢中になってました。 たなチュー:佐藤さん、上手いよね。みんなが知ってるものだけど、全然違う視点で見るっていう。 ぴかり:そこは佐藤さん絡んでないけどね。高橋(洋二)さんだから。 一同:(笑)。 たなチュー:(高橋さんの方を向いて)ごめん! ーーたしかに放送開始当初から「価値観の多様性」がテーマとして掲げられていただけあって、普段日常で見慣れているモノが全く違う使われ方をするなど、その固定概念を破壊した“視点”に驚きました。アドリブもあったのでしょうか? ぴかり:最初は結構がっつり台本通りにやってたけど、だんだん俺たちだけではなく演出陣とかも含めてみんなで遊ぶ感じになっていって…。でも、割ときっちりやってたよね? たなチュー:やってた。特撮みたいなものが絡んだり、着替えたり、そういうのが結構あったので、止め止めで撮影してました。普通に舞台に上がって、そのままずっと撮りっぱなしみたいな感じじゃなかったので、カットごとにドラマっぽく撮るっていうか。だから、時間もかかるし、逆に言うと我々もセリフをいっぱい覚えなくても済んだっていうかね。 ーー(笑)。 ぴかり:でも、稽古はみっちりやったよね? たなチュー:毎回読み合わせからしっかりやって。 ぴかり:リハ室で稽古をやってて、その時の隣が「あっぱれさんま大先生」(フジテレビ系)のリハ室だったんですよ。いつも俺らが本気で稽古をしてたら、さんまさんに会ったときに「お前らコントの稽古を何本気でやってんの?」って怒られて。でも、本当にうるさいのはさんまさんの方だったっていう。収録が終わってるのに、三宅(恵介)さんがゲラゲラ笑ってるぐらい、カメラが回ってないところでもずーっと本気でトークしてた。 ーー今回のさんまねずみ師匠との収録は、リハーサル軽めで臨むことになりそうですね(笑)。では、自分たちが“ネズミ”でよかったなと思うことはありますか? たなチュー:ネズミってちょっと汚いとか嫌われ者みたいな側面もあるけど、爆チュー問題は見た目がすごくポップでしょ?可愛らしくて面白い。そういった意味でも親しみやすくて、なんかいいなと思います…けど…。 ぴかり:なんだそりゃ。 たなチュー:質問が難しいんだよ(笑)! ぴかり:爆チュー問題で「笑っていいとも!」(フジテレビ系)も「明石家サンタ(史上最大のクリスマスプレゼントショー)」(フジテレビ系)も「FNS歌謡祭」(フジテレビ系)も出たし、「ちびまる子ちゃん」(フジテレビ系)とも共演したし。本当にこれをやっていないとできなかったことはいっぱいあるなと思いますね。 …(ふとたなチューを見て)お前ミッキーマウスのTシャツ着てるな。おかしいだろ、どう考えても。ネズミ被りはダメなんだよ、一番。 たなチュー:別にダメではないだろ(笑)! ■「『爆チュー問題』は胸を張って代表作って言える」 ーー今回の特別番組はフジテレビでの放送もあります。今年2月に将来の夢は「爆チュー問題」を地上波に戻したいと言っていましたね。 ぴかり:俺はもうずーっと言ってるんですよ。今回は確かに地上波なんだけど、俺が言ってる地上波は、“ゴールデン”です。特番でいいって言ってるんですよ、それもずーっと。歴代フジテレビの社長は必ず「ぜひやりましょう」って言うのに、一回も…。 ーーたなチューさんもぴかりさんと同じように「爆チュー問題」に対する夢はあるのでしょうか? たなチュー:そりゃあね!ゴールデンはもちろんですけど、かつてやってたようにレギュラー化できたらなと。子ども番組だったので、最初は学校から帰ってきた夕方、夜ご飯前の時間帯にやってたんですよ。「でたらめチューズデイ」だったから、俺らはそのうちの火曜日にコーナーを持ってて。だからまた帯のレギュラーでやれたら一番いいですね。 ーーそんな特別な思いがある同番組ですが、お二人にとって「爆チュー問題」とは? たなチュー:「子どもの頃観てました」って本当によく言ってもらえて。テレビ局のスタッフや共演者をはじめ、いろんな方から「あの頃、観てました」って聞くたびに、かなり影響力があったんだなってうれしく思うんですよね。 ぴかり:うん、うれしいよね。 たなチュー:まさかのつい最近、菊池桃子さんに「子供がちっちゃい頃に、とにかく『爆チュー問題』が大好きで、『でたらめな歌』を親子でずっと歌ってた。多分、爆笑問題さんより私の方が歌ったことがあります」って言われて…すごいなと思って。そういう話を聞くと、いろんな方が見てくれてたんだって改めて実感できます。 ぴかり:「爆チュー問題」はライフワークですね、我々が漫才をやるのと同じくらい。爆笑問題の漫才と「爆チュー問題」のコントは、自分の中ではもう絶対に続けていくものって思ってます。 ーー最後に、なぜ「爆チュー問題」はここまで長く愛される番組になったと思いますか? たなチュー:セットから台本まできっちり作り込んでるコントって、今ウケないんですよね。実際テレビではそういう番組はどんどんなくなっていってる気がします。でも、これはそんな中でもしぶとく残っていて。今の若い人たちが「爆チュー問題」にどれだけ食いつくかは分らないんだけれども、子どもの頃に観て「面白い!」って思ったものって根強い気がして。僕らも子どもの頃“ドリフ”とかを観て育って、今でも好きですからね。だから、25年前の好きが、ずっと重なって続いていってくれてるのかなと思います。 ぴかり:我々は普段嫌われ者なんだけど、爆チュー問題のときは世間から好かれてる印象があるんですよね。「爆笑問題は爆チュー問題をやってるときが一番。だから、ずっと爆チュー問題をやっときゃいいんだよ」って思ってる人が多いんじゃないかなって。自分のキャラクターでは人には好かれないんだけど、ぴかりだったら受け入れてくれる人がいる。この世界観も含めて出来上がっている強さというか。 さっきも途中で、「サンデー・ジャポン」(TBS系)の打ち合わせがあって、プロデューサーが来てくれたんだけど、俺らがまだネズミだったんですよ。そしたら、打ち合わせそっちのけで「一緒に写真を撮ってくれ」って(笑)。爆チュー問題はやっぱり強いんだなって思ったね。我々の代表作はほとんどないんだけど、この「爆チュー問題」はもう胸を張って代表作って言えるかな。 取材・文・構成=戸塚安友奈