<甲子園交流試合・2020センバツ32校>明徳、勝利に喜び爆発 6-5、鳥取城北降す /高知
2020年甲子園高校野球交流試合(日本高校野球連盟主催、毎日新聞社、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)の第1日の10日、明徳義塾は第2試合で鳥取城北と対戦し、6―5で接戦を制した。七回まで無安打だったが、新沢颯真選手(3年)の適時打でサヨナラ勝ち。選手たちは抱き合い、喜びを爆発させた。【北村栞】 【真夏の熱闘】交流試合の写真特集はこちら 「打って点を取るだけが野球じゃない」。常日ごろ馬淵史郎監督が口にする野球理論を見事に体現してみせた。一回裏の満塁機を生かせなかったが続く二回表、遊撃手の米崎薫暉(くんが)選手(2年)が相手先頭打者の鋭い打球をダイビングキャッチして悪い流れを断ち切った。この日、チームは失策0に2併殺。二塁手の今釘勝選手(3年)も好守備を連発し、流れを作る。 五回には鈴木大照主将(3年)の犠飛で俊足の奥野翔琉(かける)選手(3年)が還り、勝ち越し。だが八回、再び試合が動く。先発の新地智也投手(3年)がつかまり、安打と死球で走者がたまる。相手スタンドからの大きな手拍子が球場に響く。力みが出て連打を浴び、逆転された。継投した甲子園初登板の代木大和投手(2年)は5点目を許したが、最後は三振に仕留めた。 八回裏、相手守備の乱れを突いて二塁の鈴木主将が本塁まで駆け抜けて追加点。更に米崎選手が適時打を放ち1点差に迫る。迎えた九回2死一、二塁。打席に入った新沢選手は「つなぐ意識で」甘く入った高めの直球を振り切りサヨナラ適時三塁打。選手たちはベンチから飛び出し、ヒーローを迎え入れた。 ……………………………………………………………………………………………………… ■熱球 ◇チーム変えた言葉と涙 明徳義塾・鈴木大照主将(3年) 苦しい1年だった。昨夏も出場した甲子園の舞台に「自分たちの代でも出たい」と努力を続けてきたが、新型コロナウイルスの影響で夢を阻まれた。一度は諦めた舞台で、何とか実現した1試合。劇的な勝利を収めると仲間と抱き合った。 大所帯をまとめるのは容易ではないが、昨秋の県大会3位からセンバツ出場権をつかみ取る過程でチームは結束を強めていった。練習の雰囲気も良く、手応えを感じていた矢先にセンバツ中止が決まった。馬淵史郎監督は「県3位から四国で優勝して出場権を勝ち取った。それは誇ってええんぞ」と慰めたが、泣きはらした顔を拭いながらうなずくことしかできなかった。 夏の甲子園も中止が決まり、練習に身が入らない部員もいた。つらい気持ちが分かる分、掛ける言葉が見つからなかった。それでも、厳しい練習に耐えてきた仲間を信じていた。6月下旬、3年生だけでミーティングを開き、自分の気持ちを正直にぶつけた。「もう1回やり直すから付いてきてほしい。俺は最後までやりきりたい」 「鈴木が泣きながら話してくれて、そこから雰囲気が変わった」。奥野翔琉(かける)選手(3年)はそう話す。誰もが認める努力家で、試合では走攻守全てでチームを牽引(けんいん)。誠実な言葉と態度で主将としての信頼を積み上げてきた。 この日は無安打だったが、チームとしては堅守で流れを作り、打てなくてもわずかな得点機を生かす“明徳らしい野球”ができた。試合後、「楽しいというよりしんどいことが多かった」とこの1年を振り返った。だが、爽やかな笑顔には1年分の喜びがあふれていた。【北村栞】 ……………………………………………………………………………………………………… 鳥取城北 100000040=5 010010022=6 明徳義塾