残業した翌日、上司から「今日は2時間早く帰っていいよ」と言われました。昨日の残業時間を早上がりで「相殺」するらしいのですが、これって違法じゃないんですか?「残業代」を払わないためとのことでした…
就業時間を超えて働くと会社側は割増賃金を含む残業代を支給しなければなりません。ただし、なかには残業代を支給したくないために勤務時間の調整を行おうとするケースがあるかもしれません。 本記事では、例えば、上司から「昨日2時間残業したから今日は2時間早くあがっていいよ」などと、いわゆる「早上がり」を提案された場合、そもそもOKなのか、違法ではないのか、今回は所定労働時間(法定労働時間)1日8時間のケースを想定して解説します。 ▼毎日「8時50分」から朝礼が! 定時は9時だけど「残業代」は請求できる?「義務」か判断するポイントとは?
残業と早上がりの相殺は原則できない
結論からいえば、残業と早上がり時間の相殺は原則できません。 つまり「今日は2時間早上がりして勤務時間は6時間なので、昨日2時間残業した分は帳消しにできる」わけではありません。なぜなら、労働基準法32条では「一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない」と規定されており、基本的に日単位で残業代を計算する必要があるためです。 一方で、例外的に認められているものもあります。「フレックスタイム制」もその1つで、これは労働者があらかじめ定められた総労働時間の範囲内で⽇々の始業や終業時刻、勤務時間を自身で決めることで、仕事やプライベートとの両立を図って効率的に働ける制度です。 フレックスタイム制の場合は、一般的な労働時間と異なり1日単位である必要はなく、1ヶ月や1年単位で労働時間を精算できます。つまり昨日2時間多く働いたから今日は2時間少なめにして調整することも可能です。 フレックスタイム制を導入するには就業規則などに規定を作り、労使協定で対象者や総労働時間、標準の1日単位の労働時間、コアタイムの有無などを定める必要があります。
早上がりさせると休業手当が必要?
会社都合で早上がりさせると、休業手当の支払いが必要となる可能性があります。労働基準法26条では、休業期間中は労働者に平均賃金の60%以上の手当を支給しなければならないとされています。 例えば、1日あたりの賃金が1万円の場合、就業時間が8時間ならば時給換算すると1250円です。休業手当は1日あたりの賃金の60%にあたる6000円となります。2時間早上がりすると実労働時間は6時間で賃金は7500円となり、6000円を上回るので休業手当の支給は必要ありません。 もし、4時間早上がりした場合は実労働時間が4時間で賃金は5000円となり、6000円を下回るため休業手当との差額に相当する1000円の支給が必要です。つまり「昨日は4時間以上残業したから、今日は午前中で帰っていいよ」などと言われても、会社側は休業手当の支払いが発生する可能性があります。